経済立て直し、前途多難 輸出に陰り、米中対立も重荷に―習氏3期目支える中国新政府
2023年03月08日14時25分
開会中の中国の全国人民代表大会(全人代)で正式に発足する、習近平指導部3期目の新政府にとって、最優先課題は新型コロナウイルスの感染を徹底的に抑え込む厳格な「ゼロコロナ」政策で大きく傷ついた経済の立て直しだ。ただ、コロナ禍で中国経済を下支えした輸出の勢いは衰え、国内の消費は冷え切っている。米中対立激化で世界のサプライチェーン(供給網)からの中国切り離しも進み、前途は多難だ。
◇工場の求人激減
上海市から車で約1時間。江蘇省蘇州市の管轄下で、大規模な保税区に多数の外資系工場を抱える昆山市には、以前は全国から多くの単純労働者が集まったが、最近は人材仲介企業が集まる中心部の通りも閑古鳥が鳴いている。職探しの労働者は「今は仕事が全くない」と口をそろえる。
河南省から長距離バスで到着した20代の男性は「地元の工場で働いていたが、給与が減ったため、職探しに来た。でも、満足できる仕事が全くなく驚いた」と語る。人材仲介会社の社員によれば、工場の求人がなくなり、25元(約500円)だった時給は今や16~17元に下がった。「景気は去年のコロナが一番厳しかった時期より明らかに悪い」という。
◇行き場のない空コンテナ
求人減少の背景には、輸出向けに生産する工場が欧米の景気減速により在庫調整に入ったことがある。輸出額は昨年10月以降は前年割れが続き、7日に発表された1~2月の貿易統計でも前年同期比6.8%減と回復の兆しが見えない。
上海市南部の沖合にある中国最大規模のコンテナ港「洋山深水港」では、輸出が大きく減ったため行き場のなくなった空のコンテナがうずたかく積み上げられていた。河北省から来たというトラック運転手は「今年に入り、請け負う仕事はさらに減った。10年以上従事しているが、これほどひどかったことはない」と吐き捨てるように言った。
◇進む切り離し
中国政府は経済回復に向け、外資誘致と内需掘り起こしを掲げる。ただ、共産党関係者によれば、「ウィズコロナ」への転換後に各地方政府が欧州などに投資誘致の代表団を派遣したが、成果はほぼ得られなかったという。同関係者は「ゼロコロナの3年間で製造業は中国を切り離したサプライチェーンが完成している。入り込む余地がない」と諦め顔だ。
長期にわたった厳格な防疫政策で消費者は財布のひもを締めている。ウィズコロナ転換で期待された「リベンジ消費」も長く続かず、高い成長を維持してきた電気自動車(EV)メーカーは今年に入り、在庫解消に向け値下げ競争に入った。ゼロコロナ政策は雇用不安を含む心理的な後遺症を社会に残しており、内需回復に暗い影を落としている。(上海時事)