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尹大統領、改善の意志貫徹 残る不満、急いだ決着―日米訪問で世論好転図る・韓国

2023年03月06日18時29分

韓国の尹錫悦大統領=1日、ソウル(EPA時事)

韓国の尹錫悦大統領=1日、ソウル(EPA時事)

  • 参院予算委員会で立憲民主党の石川大我氏の質問に答弁する岸田文雄首相=6日午後、国会内
  • 6日、ソウルの韓国外務省前で、元徴用工問題の解決策に反対する原告側市民団体

 韓国政府は、で、賠償を肩代わりする財団への日本企業の寄付を得るめどが立たないまま、解決策発表に踏み切った。尹錫悦大統領の日韓関係改善への強い意志で押し切った格好だ。しかし、原告側は強く反発し、長期戦の構えを見せる。尹氏は早期の訪日、訪米を通じて、世論の好転を図りたい考えだ。
 ◇「大局的決定」
 解決策を発表した朴振外相は「韓国の高まった国力に見合った主導的、大局的な決定だ」と説明。大統領府高官も「きょうから、北朝鮮問題などに限らず、全方位的に信頼を回復する契機になる」と強調した。
 尹氏の日韓関係改善への強い思いは、支持率が下がっても、「屈辱外交」と批判を受けても、揺らぐことはなかった。「自由と民主主義」の価値を強調し、米韓同盟を重視する尹政権にとって、日本との関係回復以外の選択肢はなかった。
 同時に、文在寅前政権の「失敗」を立て直し、2011年を最後に実現していない「日韓首脳シャトル外交」を復活させることを自らの業績にしたい意向がある。こうした政権の思惑に加え「検事時代の人的交流などを通じて日本に強い愛着を持っている」(政府関係者)と言われている尹氏の個人的な思い入れも加わった。

 尹氏は昨年5月に大統領に就任するや「早く解決せよ」と指示。「早く早く」が口癖だったという。
 ◇慰安婦合意のトラウマ
 「密室合意」と世論の批判を浴び、事実上ほごになった15年の日韓慰安婦合意は韓国政府内でもトラウマになっていた。その反省から、4回にわたる官民協議会に続き、1月には解決案を公表する公開の討論会も開催。朴外相や外務省幹部が原告らに粘り強く接触した。
 韓国政府は、原告や世論の理解を得るために、日本の謝罪と財団への日本企業の寄付は不可欠と判断し、日本側に要求し続けた。しかし、謝罪は過去の立場の継承にとどまり、財団への寄付はゼロ回答。日本側は「日帝強制動員被害者支援財団」の名称にも拒否感を示したという。
 韓国では、政権序盤の勢いがある時期を過ぎれば、機運を失いかねない。不満を抱きつつも「日本政府の限界値に達した」(大統領府関係者)と見切りを付けた。
 ◇原告側「現金化」強調
 昨年来、新型コロナウイルス対策の水際対策が緩和され、訪日する韓国人観光客が急増。韓国政府は「関係改善を支持する世論も一定以上ある」(日韓関係筋)と踏む。
 尹氏は早期の訪日、訪米に続き、5月に広島で開かれる先進7カ国(G7)首脳会議への招待国としての参加も想定している。首脳外交ラッシュで世論の評価を得たい考えだ。
 韓国外務省関係者は「財団が求償権を行使することは想定していない」と説明。政府に近い関係筋も「次期政権まで4年以上ある。ひっくり返る可能性は低い」と語る。
 しかし、原告側関係者は「解決策に肯定的な立場を表明した原告は半分以下だ」と主張。解決策を受け入れない原告に関しては、日本企業の韓国内資産の「現金化」手続きを続けるとともに、韓国内にある三菱重工業に支払われるべき代金を取り立てるため、新たに提訴する考えを示した。「逆風」が長期化する可能性もある。(ソウル時事)

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