「文明出会いの地」に試練 居住不能、復興遠く―トルコ大地震
2023年03月07日07時03分
【ハタイ(トルコ)時事】トルコ南部で大地震が発生してから6日で1カ月がたった。ユダヤ、キリスト、イスラム3宗教ゆかりの「文明出会いの地」として知られる南部ハタイ県の中心部アンタキヤ地区は壊滅的な被害を受け、ほとんど人が住めない状況に陥っている。街はがれきであふれ返り、復興の道筋は見えない。
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ハタイ県の地震前の人口は約170万人。ソイル内相によると、県内で1万2000棟以上が倒壊し、倒壊の危険に直面している建物が7000棟近くある。さらに、これらを合わせた数をはるかに上回る「大きく損壊した建物」があり、被害はアンタキヤに集中している。
アンタキヤはかつて、古代ヘレニズム(ギリシャ)文化の中心都市アンティオキアとして栄えた。旧市街には歴史的なシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)、キリスト教会、モスク(イスラム礼拝所)が共存してきたが、いずれも地震で倒壊するなど大きな被害を受けた。
住宅や商店など生活の場もことごとく失われた。旧市街一帯に姿を見せる一般市民は、避難先から様子を確認するために訪れる人々だ。
妻と子供を北部サムスン県の知人宅に残し、大破した自宅付近に戻ってきたアリ・アスランユレクさん(42)は「歴史的な都市から離れたくない。でも離れるしかない。住む場所がないからだ」と悲痛な表情を浮かべた。
メブルデ・デイリメンジさん(45)は、変わり果てた街の風景を前に「地獄だ。地獄だ」とつぶやいた。ハタイ県周辺部にある避難先のテントでは「がれきが目に入らないことだけが救いだ」と言い、「生きている気がしない。これからどうしたらいいのか」と途方に暮れていた。
地震ではトルコ国内で約4万6000人の死亡が確認され、隣国シリアと合わせて犠牲者は5万2000人を超えた。シリアに隣接するハタイ県では、多くのシリア人も命を落とした。