「正規、非正規の格差是正を」 政府に幅広い支援求める―出生数減少で専門家
2023年03月01日07時06分
出生数の減少に歯止めがかからない現状について、専門家は非正規社員の増加や出産適齢期の女性の減少などの要因に加え、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあったと指摘する。その上で「正社員や非正規社員の格差をなくし、安心して子育てできる環境整備が必要」と、政府に対して幅広い支援を求めた。
労働経済学と社会保障が専門のお茶の水女子大の永瀬伸子教授は「海外と比べて日本は行動制限の心理が強く、若者の人間関係や出会いの機会がより制限された側面があったのでは」としてコロナ禍による影響に言及。非正規社員の増加も背景として挙げ、「非正規だと収入が少なく、正社員は労働時間が長い傾向がある。若者たちが子供を持つ将来を描けなくなっている」と指摘する。
永瀬教授が2021年に行った調査によると、25~29歳の未婚女性のうち、「子供を持ちたい」と思う人は正社員で6割、非正規社員で4割と差が生じたという。これを踏まえ「育休を取りやすくするなど非正規と正社員に同じ権利を与え、長時間労働の是正や子育て期間中に仕事を失わないよう支援する政策が必要だ」と訴えた。
中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は出生数減少の要因について「団塊ジュニア世代が50歳にかかり、子供を産む30歳前後の女性が減り続けている」と分析する。婚姻数が3年ぶりに増加したことについては「雇用などコロナ禍の経済的影響が一段落したのでは」と指摘した。
山田教授は育児休業を例に挙げ、「非正規社員やフリーランスの人は使用できない制度になっている。国の政策は夫婦とも正社員の人を念頭にしたものばかりで展開されてきた」と政府の対応を批判。必要な対策として高等教育の無償化などを挙げた上で、「正規と非正規間の格差を是正し、結婚や出産がしやすくなるようきめ細やかな支援が必要だ」と述べた。