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反撃能力、運用原則を明確に 「統合司令部」創設に否定的―真部朗元防衛審議官インタビュー

2023年02月26日07時19分

インタビューに答える真部朗元防衛審議官=6日、東京都江東区

インタビューに答える真部朗元防衛審議官=6日、東京都江東区

 防衛省で防衛審議官や整備計画局長を務めた真部朗氏が25日までに、時事通信のインタビューに応じた。反撃能力(敵基地攻撃能力)に関する岸田政権の説明不足を指摘。運用原則をあらかじめ閣議決定などで明らかにすべきだと求めた。主なやりとりは次の通り。

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 ―政府が反撃能力保有を決めた。
 やや唐突感がある。自衛隊と米軍はこれまでミサイル防衛(MD)で対処する態勢を取ってきた。周辺諸国のミサイル戦力向上で、この態勢に疑義があるなら、MD能力を高めるのが基本だ。それを補う手段として反撃能力を考えるべきだ。反撃能力を保有する理由が判然としない。
 ―政府は反撃能力保有で抑止力が高まると説明している。
 抑止力の一部は手に入る。ただし、日本の反撃能力保有を理由に米軍の態勢が後退すれば(「核の傘」を含む米国の)拡大抑止の低下につながる。それは回避しなければいけない。
 ―自衛隊は反撃能力を運用できるか。
 軍事技術的には可能だ。政治的、戦略的に賢明な運用ができるかは、自衛隊を指揮する立場の政治の能力の問題だ。反撃能力行使は、ほぼ確実に相手の報復を招く。純然たる守りにだけ徹するような今の自衛隊の運用に比べ、大変複雑で高度な判断が求められる。
 ―ミサイル発射の形態が多様化し、反撃は難しいという指摘もある。
 移動する目標をいかに正確かつリアルタイムで捉えることができるのかがカギになる。今後こうしたシステムを構築できるかどうかだ。
 ―反撃能力は専守防衛、憲法との関係で問題はないか。
 保有することは問題ない。ただし、MDによって迎撃が十分可能な状況で、反撃能力を行使することは専守防衛に反する可能性がある。使い方によっては憲法との関係で疑義が生じる。政府は反撃能力をどのような状況で行使するのか、運用原則を閣議決定、あるいは国会答弁で事前に明らかにしておくべきだ。今の政府の説明は不十分だ。
 ―日米が南西諸島防衛を強化している。
 中国の活動を踏まえ防衛力強化を図るのはやむを得ない。その結果、沖縄の基地負担が増していることは否定できない。負担を最小化する努力は政府の責務だ。十分な補償も必要だ。
 ―安全保障関連3文書は自衛隊の運用強化のため、常設の統合司令部創設を盛り込んだ。
 統合幕僚長の職責である「防衛相の補佐」と「防衛相からの命令の執行」を分離して、後者を統合司令部に移譲するのであれば適切ではない。統合幕僚長と(司令部トップの)統合司令官の判断が異なった場合どうするのか。部隊運用に混乱が生じる恐れがある。

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