欧州、東西で温度差 ウクライナ支援、足並みに乱れも
2023年02月21日07時04分
【パリ時事】ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州は対ロシア制裁やウクライナ支援で総じて結束してきた。しかし、ロシアの脅威に敏感な東欧と、経済的利害をてんびんにかける西欧の温度差は歴然だ。紛争が長期化する中、各国の足並みが乱れる恐れもある。
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「プーチン(ロシア大統領)の狙いはソ連復活だ。警報が何度鳴れば気付くのか」。旧ソ連から独立したバルト3国の一つ、リトアニアのナウセーダ大統領は昨年2月の侵攻開始後、西欧へのいら立ちをあらわにした。
西欧には、侵攻は自分たちの「失敗」(ドイツ公共放送)が一因だという負い目がある。ロシアは2014年、ウクライナ南部クリミア半島を併合したが、欧州連合(EU)のかじ取り役を果たしていた当時のメルケル独首相は、ロシア産天然ガスを欧州に運ぶ海底パイプラインの第2弾「ノルドストリーム2」建設を推進。東欧が懸念を表明しても、聞く耳を持たなかった。
EUには、ロシアや中国といった強権国家に対話を通じて変化を促す「関与政策」の伝統がある。経済協力も関与の一環とされるが、ドイツが取った行動は、プーチン氏に対し、欧州は今後もロシアとのつながりを重視していくという「誤ったシグナルを送った」(EU高官)可能性が高い。
メルケル氏の後を継いだショルツ首相も、ウクライナ軍事支援の動きは鈍かった。今年1月、主力戦車「レオパルト2」の供与表明に至ったが、東欧ポーランドなどの圧力を受けた末の決断で、「不承不承」(英紙)の印象を否めない。
ドイツと並ぶEU主要国のフランスは、マクロン大統領が「ロシアに屈辱を与えてはならない」「ロシアにも安全保障を」と発言し、東欧の反発を招いた。今月17日の仏メディアのインタビューでは「最後は武力ではない」と語り、ウクライナ支援はロシアとの交渉で有利な和平案を引き出すのが目的だと説明した。
これに対しポーランドのモラウィエツキ首相は18日、「ウクライナに最大限の兵器を提供する」と強調。「決意さえあれば戦争は今年終わる。勝利するのはウクライナだ」と訴え、対ロシア強硬姿勢を鮮明にした。
英シンクタンク「欧州改革センター」のチャールズ・グラント所長は「ロシアとの和平のために領土を手放せとウクライナに要求するEU加盟国はない」と指摘。ただ、景気低迷が長引くと世論が移ろいかねず、そうした局面で「プーチン氏がそこそこの和平案を提示したら、欧州の結束が揺らぐ可能性はある」という見方を示した。