正恩氏の娘、早くも後継準備? 偶像化で高まる関心―北朝鮮
2023年02月16日07時05分
【ソウル時事】「ジュエ」さんとされる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の娘に対する関心が韓国で高まっている。北朝鮮における偶像化の動きが進み、後継者説も広がる。一方、年齢はまだ10歳前後とみられ、否定的な見方も少なくない。
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昨年11月、公に初めて姿を現したジュエさんは今月8日の軍創建日「建軍節」の軍事パレードで正恩氏と並び入退場。正恩氏の耳元で何かをささやき、父の頬を両手で触れるなどする姿が確認された。朝鮮中央テレビはしばしばジュエさんを大きく映し、注目させる意図は明らか。さらに「朝鮮切手社」は、正恩氏とジュエさんを一緒に印刷した記念切手を17日に発行すると公表した。
北朝鮮メディアは、建軍節前日の祝賀会に出席したジュエさんについて「尊敬する」という枕ことばを付けて報道。党や軍が敬意を抱いていると受け取れ、後継者説の大きな根拠となっている。
2009年ごろに後継者に決まり、11年末に最高指導者になった正恩氏は党や軍を掌握するのに苦心した。後継者を早く示し、十分な準備期間を確保しようとしている可能性もある。家父長的な雰囲気が強い北朝鮮で、女性の後継者を時間をかけて浸透させようとしているとも考えられる。
一方で、韓国の権寧世統一相は15日、ジュエさんの登場は「特定の人物というより、正恩氏とその一家に対する忠誠心を高めるためではないか」と述べ、後継者説に慎重な姿勢を示した。
早々に後継者を決めれば、現指導者の求心力が衰えるのが世の常。正恩氏の健康不安説も広がりかねない。ある専門家は「娘を溺愛する正恩氏がプレゼントとして軍事パレードを企画したにすぎないのでは」と指摘する。ジュエさんがこれまで登場したのは全て軍関連の行事で、「強力な軍事力が将来世代の生命と安全を守るというメッセージ」(専門家)という解釈もある。
ほかに2人いるとされるきょうだいが今後登場するかも関心を呼びそうだ。ジュエさんが後継者だとすれば、正恩氏の妹、金与正党副部長が権力の中心から遠ざけられる可能性もある。