日銀人事、金融政策の見通しは
2023年02月15日07時09分
政府は黒田東彦日銀総裁の後任に経済学者の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した。人事案の評価と金融政策の今後の見通しについて、元日銀理事でみずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫エグゼクティブエコノミストとBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに聞いた。
◇拙速な利上げはしない=みずほリサーチ&テクノロジーズの門間一夫氏
―日銀人事案の受け止めは。
植田和男氏は経験も説明力もあり、非常に良い人選だ。副総裁候補の2人とのバランスも良く、(正副総裁候補に)国際派が3人そろっており、対外的に積極的なコミュニケーションができるという今の時代を象徴した組み合わせだ。
―金融政策の方向性は。
2%物価目標の達成に向け、経済・物価情勢を踏まえて今の緩和政策を続けていく。物価目標の達成はまだ難しいが、この10年で今は一番(達成の)チャンスがある。この機会を最大限生かそうとするだろう。植田氏が審議委員に就任していた2000年にゼロ金利政策の解除に反対した一つの理由でもあろうが、「拙速な利上げは避ける」という考えが非常に強いと思う。物価目標の達成が確実になるまでは一歩たりとも緩和を後退させる「出口」に向かわないだろう。
―長短金利操作の枠組みなどを修正するか。
現在の長期金利を低く抑え込むイールドカーブ・コントロール(YCC)は、市場との対話が成立せず、市場機能が壊れるなど、非常に弊害が大きい政策だ。金融緩和の後退ではないことをしっかり説明して理解される環境がつくれれば、YCCを撤廃するのではないか。
―市場との対話について。
黒田東彦総裁の就任時と今では、局面が違う。金融緩和政策を大きく変えるのではなく、(植田氏には)繊細で慎重なコミュニケーションを各方面と丁寧にしていくことが求められている。