「60年超」運転に批判殺到 政府、原発政策転換へ押し切る
2023年02月10日20時36分
岸田政権が原発政策の大転換へ、また一歩踏み出した。政府は10日の閣議で、原発の「60年超」運転容認や建て替え推進などを盛り込んだ「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を決定。一般からの意見公募で批判が殺到したものの、「100回を超える審議会や、与党の議論を積み重ねてきた」(西村康稔経済産業相)と押し切った。
基本方針に関する政府の意見公募には、昨年12月23日から先月22日までに3303件が寄せられた。原発政策については、経産省幹部も「否定的な意見が多くを占めた」と認める。
政府がエネルギーの安定供給につながると理解を求めている運転期間の延長に関しては、「休止している間も設備の劣化は進む」「事故の可能性が格段に高まる」といった不安の声が続出した。次世代型原発への建て替えを巡っても、「ますます建設費が増大する」「次世代炉でも危険性はなくならない」などの懸念が相次いだ。
一方、運転期間延長に関する原子炉等規制法の改正については、原子力規制委員会の委員からも反対論が上がっている。法改正に関して同委員会の了承が得られていない段階での基本方針決定は、見切り発車の側面が否めない。
使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分でも、隔たりが大きい。意見公募では「処分方法が決まっていない段階で原発を推進するのは不合理で、将来に対して無責任だ」などの声が寄せられたが、政府は「国民の不安は燃料の行き先が決まっていないこと」と、「政府の責任」で処分地選定を急ぐ構えだ。
今後、原発政策を巡る議論の舞台は国会に移る。立憲民主党などは政策転換に反対しており、激しい論戦が予想される。