米債務上限、なぜもめる? 高まる不履行リスク―ニュースQ&A
2023年02月08日17時01分
米連邦政府ができる借金の上限額を定めた「債務上限」の引き上げを巡り、バイデン大統領と下院で多数派を占める野党共和党の協議が難航している。交渉が長引き、上限が速やかに引き上げられなければ、6月にも財政資金が枯渇し、米国債の元利払いができないデフォルト(債務不履行)に陥る恐れがある。
―「債務上限」とは。
政府が発行できる国債などの「枠」のことだ。政府の借り入れについては議会が権限を持つ。当初は国債の新規発行ごとに議会承認が必要だったが、第1次世界大戦中の1917年、柔軟な資金調達を可能にするため導入された。
―上限が近づいているのか。
先月、2021年末に設定された約31兆4000億ドル(4100兆円)の上限に達した。このため、公務員退職年金などの投資を停止し、財政資金をやり繰りしている。
―なぜ今回は難航しているのか。
昨年秋の中間選挙で、共和党が下院の多数派を奪還。24年の大統領選を見据え、バイデン政権への攻勢を強めている。特に共和党右派が強硬に歳出削減を主張している。右派の造反でマッカーシー議長は選出まで15回の投票を要しただけに、マッカーシー氏が党内をまとめ政権と交渉できるか手腕が不安視されている。
―デフォルトとは。
米政府が発行した国債などの元本や利息が約束通りに払えなくなることだ。米国債は最も安全な資産とされ、世界の投資家が大量に保有している。デフォルトとなれば金融市場が大混乱し、世界経済に深刻な打撃を与える可能性が高い。
―過去にデフォルトはあったのか。
ない。ただ、11年に債務上限引き上げをめぐり、当時のオバマ政権と野党共和党が対立。土壇場で双方が歩み寄りデフォルトは回避されたが、格付け会社が米国債を初めて格下げしたため、株価が急落するなど市場が大きく揺れた。
―今後の展望は。
バイデン氏は3月、政権の予算要望である「予算教書」を議会に提案する。大幅な財政赤字削減を打ち出し、共和党の譲歩を促す考えだ。財政資金のやり繰りが可能とされる6月まで政権と共和党の駆け引きが続き、紆余(うよ)曲折がありそうだ。(ワシントン時事)