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五輪談合「大会成功」旗印 寡占業界、不正の温床に―電通中心、競技団体と結び付き

2023年02月09日09時25分

東京五輪の閉会式で打ち上げられた花火=2021年8月8日、東京・国立競技場(AFP時事)

東京五輪の閉会式で打ち上げられた花火=2021年8月8日、東京・国立競技場(AFP時事)

 東京五輪・パラリンピックの会場運営を巡る入札談合事件は、大会組織委員会元次長の森泰夫容疑者(55)らが東京地検特捜部に逮捕される事態に発展した。「大会成功」を旗印に談合したとみられるが、電通を中心とする各社が競技団体と結び付きを強めることで寡占化し、談合の温床となったとの指摘もある。

辣腕、会場運営の要 世界陸上手掛け―森元次長・五輪談合

 五輪は17日間の日程で、43会場で過去最多の33競技339種目が実施された。パラ大会は22競技539種目だ。森元次長らは、複数の会場で多数の競技が同時進行する大会運営を担い、本番さながらのテスト大会で課題を洗い出してきた。
 「ノウハウのない会社が会場運営を担うのは非常に難しい。談合は必要悪だ」。森元次長を以前から知り、競技運営に携わってきた関係者はこう言い切った。施設の構造や設備を熟知し、分刻みのタイムテーブルに従ってさまざまな人の動線を細部まで検討する必要があるためだという。
 談合に関わった企業の幹部は「採算が見込めず、応札のない会場も懸念され、会場運営は組織委の頭痛の種だった」とし、「マニュアルがあればどこでもできるものではない」と実績を強調する。別の企業の幹部は「テスト大会の話が持ち上がった時、森さんから『出てくる気なのか』と言われて圧力を受けた社もあった。うちは下請けに入るのも『ノー』と言われ、下請け企業の選定にも森さんの意向が反映されていた」と明かす。
 談合の背景として、広告代理店や競技団体との関係を指摘する声もある。日本オリンピック委員会(JOC)関係者は「競技団体が『ここを使ってくれ』と要望を出すが、国内外の大会を仕切るのはスポンサーを連れてくる広告代理店。中でも電通は絶対的な力を持ち、大きな競技団体ほど電通に任せる」と説明する。電通が関わっていない競技を博報堂やADKマーケティング・ソリューションズなどが埋め、陸上や水泳など分野ごとに強みを持つイベント会社も加わり、市場競争が働きにくい「すみ分け」の構図が浮かぶ。
 森元次長らは事前に各社の意向を調べ、会場ごとの一覧表を作成したとされる。受注を当て込み、一つ前のリオデジャネイロ五輪で社員を競技団体に帯同させた社もあり、最も協力した社を落札予定者とする思惑も透ける。ある検察幹部は「五輪談合はこれまでの業界の商慣行、仕組みが問われている」と指摘した。

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