防衛増税、首相明言せず 「解散で信問え」立民挑発―国会本格論戦スタート
2023年01月25日20時12分
岸田文雄首相の施政方針演説に対する各党代表質問が25日始まり、通常国会の論戦が本格化した。首相は防衛力強化をはじめとする政策転換について「国民に丁寧に説明する」としてきたが、施政方針と同様、「防衛増税」を直接的な表現で語らなかった。立憲民主党は格好の攻め口とみて、増税を争点に衆院解散に踏み切るよう迫った。
◇「異次元の説明不足」
「施政方針は明らかに『増税隠し』演説だった。答弁でも『増税』という言葉を使わないのか」。代表質問で最初に登壇した立民の泉健太代表は、こう追及。首相は「今を生きるわれわれが将来世代への責任として対応すべきものだ」と曖昧な言い回しに終始した。
首相は昨年暮れ、防衛力の抜本的強化、原子力発電の最大限活用、異次元の少子化対策という「三つの大きな政策決定」(自民党の茂木敏充幹事長)に踏み出した。野党から「閉会中の決定は国会軽視」と批判が上がると、施政方針では「国会の場で正々堂々議論する」と反論した。
相次ぐ政策転換で決断力を演出したものの、内閣支持率は低迷を抜け出せない。「丁寧な説明」と繰り返す首相の姿には「国民の理解が進んでいない」(周辺)との焦りも透ける。
とはいえ、25日の答弁で首相が国民の疑問や不安に正面から答えたとは言い難い。
「専守防衛」との整合性が問われる反撃能力(敵基地攻撃能力)の攻撃対象に港湾、空港、指揮命令系統が含まれるかと問われると、「状況に照らして判断する」と明言を避けた。「なぜ正直に増税と言わないのか」との質問にも、「昨年末に決定した財源確保の考え方や税制措置の内容は全く変わらない」と語るだけだった。
煮え切らない答弁の背景には、財政規律派と積極財政派の対立が自民党内で再燃しつつあることもある。防衛費増額に関する24日の党特命委員会では議題外の増税論議が過熱し、執行部側が「紅組白組に分かれる話ではない」とたしなめる場面があった。若手議員の一人は「攻勢を強める積極財政派に首相は追い詰められている」と話す。
少子化対策でも首相の口は重かった。茂木氏は代表質問で「児童手当の所得制限を撤廃すべきだ」と提言。だが、首相は「皆が参加する次元の異なる少子化対策を実現したい」と給付には言及しなかった。首相周辺は「異次元は規模・内容ではなく、考え方の異次元を意味する」と、給付拡大への期待を冷まそうとしている。
「異次元の説明不足だ」。代表質問を終えた泉氏は、皮肉を込めて首相をあげつらった。
◇野党共闘にほころび
「防衛増税を行うなら解散・総選挙で国民の信を問え」。泉氏は代表質問で、異例の強い口調で首相を挑発。壇上から「野党6党は防衛増税に反対だ。力を合わせて防衛増税に反対しよう」と呼び掛けた。
立民は昨秋の臨時国会で「水と油」と言われた日本維新の会と共闘し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者を救済する立法などで政府・与党から大幅な譲歩を引き出した。立民は今国会でも維新と共闘継続で合意し、臨時国会での「成果」を再現する戦略を描く。
ただ、共闘の行方には不透明感が漂う。24日、旧統一教会との接点を細田博之衆院議長にただした後、なおも追及を続けようとする立民をよそに、維新は「一つの区切りとしたい」と表明、早くも足並みの乱れを露呈した。自民党は安保・エネルギー政策での協力で維新と合意し、立民との間にくさびを打ち込もうと躍起だ。
4月には両党が激突する統一地方選が控える。立民の閣僚経験者は「共闘は厳しい。足並みはどんどん乱れるだろう」と悲観的だ。