岸田首相、正念場の通常国会 統一選にらみ与野党論戦へ―少子化、防衛力、原発
2023年01月23日21時22分
岸田文雄首相は23日の施政方針演説で、防衛力強化や少子化対策など「先送り」できない難題に取り組む決意を示した。ただ、昨年の同時期と比べ内閣支持率は半減しており、政権浮揚は容易ではない。通常国会は首相にとってまさに正念場となる。
◇統一選で国会日程窮屈に
「先送りできない課題に正面から愚直に向き合い、一つ一つ答えを出す」。首相は演説でこう強調した。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題への対応や閣僚の辞任ドミノで、支持率は低迷。政権運営にまだ余裕があった1年前とは様変わりした。
首相としては、2023年度予算案や提出予定の60法案の成立に全精力を傾けるのが至上命令。「防衛力強化資金」を設ける特別措置法案、原発の60年超の運転を可能にする原子炉等規制法改正案など与野党対決型法案も含まれており、激しい論戦が交わされそうだ。
4月には統一地方選と衆院補欠選挙が控える。国会は事実上の「自然休会」となる見通しで、国会運営は窮屈な日程を強いられそうだ。5月19~21日には首相が議長を務める先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島市で開催される。関係閣僚会合も各地で予定されており、法案審議に影響を与える可能性もある。
まずは今月30日から始まる見通しの衆院予算委員会審議が最初のヤマ場となる。
◇野党、増税反対で足並み
首相は「異次元」と打ち上げた少子化対策や、春闘での大幅な賃上げ実現など、目に見える形で成果を出して、巻き返しを図りたい考えだ。
少子化を巡っては、6月の経済財政運営の基本指針「骨太の方針」決定までに、子ども予算倍増に向けた大枠を提示する考えを示している。統一地方選などをにらみ財源論議は先送りし、具体的な政策メニューをそろえて有権者へのアピールを優先した。
自民党関係者は「統一選前に『増税自民』などと言われたら戦えない」と胸をなで下ろすが、野党は自民党幹部の発言などを念頭に「消費税率を上げるつもりではないか」と警戒。「増税反対は世論の賛同が得られやすい」(立憲民主党幹部)と手ぐすね引く。防衛力強化のための増税方針を巡っても立民などは「国会審議を経ていない」と批判しており、論戦激化は必至だ。
旧統一教会を巡る問題もくすぶる。政府は昨年12月に成立させた被害者救済法で一定の区切りを付けたとするが、野党は引き続き細田博之衆院議長ら自民党と教団との関係を追及する方針だ。
◇問われる説明責任
「くしくも(終戦から)77年がたった今、われわれは再び歴史の分岐点に立っている」。
首相は演説で、近代日本の転換点として明治維新と終戦を挙げ、今がそれに並び得る危機との認識を示した上で「日本を次の世代に引き継ぐために、私に課せられた歴史的使命を果たす」と訴えた。
その使命を果たすには、今こそ就任時から掲げている「聞く力」を発揮して、国民が納得する説明責任を果たす必要がある。