徴用工問題「肩代わり」案公表 日本企業の関与明言せず―韓国政府
2023年01月12日18時39分
【ソウル時事】韓国外務省は12日、国会で元徴用工問題解決に向けた公開討論会を開き、既存の公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が被告の日本企業の賠償金を肩代わりする案の概要を明らかにした。同省から徐旻廷アジア太平洋局長が出席し、被告の日本企業の謝罪は困難との認識を示すと同時に、「日本が過去に表明した『痛切なおわびと反省』を誠実に維持・継承することが重要だ」と強調した。
韓国政府が肩代わり案に関し公の場で説明するのは初めて。徐氏は討論会で、昨年4回にわたり開いた官民協議会の議論や日韓協議を踏まえてまとまった方向性を提示。「被告企業が徴用工問題全体について謝罪するのは不可能だ」と語った。日本政府が戦後50年の「村山談話」など過去に表明した立場を確認することを期待しているとみられる。
原告側が「最低ライン」として求めている財団への被告企業の資金拠出を巡っては「創意に富んだアプローチが必要だ」と指摘。「日本の呼応をどの程度確保できるか、駆け引きしつつ緊密に協議している」と述べるにとどめ、可否について明言しなかった。
財団の沈揆先理事長も準備状況を報告し、「日本企業の参加と謝罪は、これまでのところ困難とみられる」との見方を示した。同時に、確定判決の原告にとどまらず幅広い被害者を支援するための特別法の制定を目指すとした。
公開討論は解決策の発表に至る最終段階と位置付けられている。ただ、原告側が納得できる日本側の措置への言及はなく、世論の動向や日韓間の調整次第では発表まで手間取る可能性もありそうだ。徐氏は「討論会で出た意見に関し、日本側と再び交渉する」と議論を引き取った。
討論会には原告側関係者や専門家らが出席。原告側弁護士は「韓国政府と韓国企業が全責任を負う案だ」と解決策を批判した上で、さらに討論会を重ねるべきだと主張した。
原告側の一部は政府を批判して参加しなかった。討論会に先立ち、原告側の支援者や野党議員ら約100人が国会前で「被害者の人権と尊厳を無視した屈辱的な解決策を撤回せよ」と声を上げた。