市街地のクマ被害を防げ 出没対応強化や人材育成―6道県でモデル事業・環境省
2023年01月01日07時12分
市街地に出没するクマによる人身被害が全国で相次いでいることを受け、環境省は今年度から6道県でクマ対策強化のモデル事業に乗り出した。行政や地元猟友会などが連携し、迅速に捕獲したり追い払ったりできる体制を整えることや、クマの侵入を予防することが柱で、自治体ごとに決める。同省は捕獲や電気柵の設置などの技術を持つ専門家を派遣し、人材育成を支援する。
モデル事業は3年程度を予定しており、北海道と岩手、新潟、長野、福井、奈良の各県が参加。初年度となる今年度は地域の状況に応じたクマ対策の計画を策定する。
このうち、岩手県は県内市町村と警察、猟友会などが共同でクマ出没時を想定した実地訓練を検討。県内では2022年4~11月、クマによる人身被害が全国最多の23件に上っており、市街地からクマを追い払ったり、麻酔銃を撃ったりする判断を誰がいつ行うかといった手順を明確にしておき、被害を抑えたい考えだ。
福井県は、出没予防や捕獲などのノウハウを持つ県OBや猟友会メンバーで構成する「クマ対策アドバイザー」を現在の4人から20人程度に増やす方針。長野県などは、人が住む地域とクマの生息地域を分けて対策を講じる「ゾーニング」により、市街地への侵入を防ぐ。奈良県は人身被害防止を目指し、隣接する三重、和歌山両県と広域連携する。
同省の担当者は「モデル事業を通じてクマ対策の先進事例を全国に広め、人身被害を減らしたい」としている。
クマは、餌となる木の実が不作の年には市街地に出没しやすくなる。さらに、中山間地域で過疎化や高齢化が進み、耕作放棄地が増えた結果、クマの生息地との境界線があいまいとなり、市街地での出没件数が増えたと考えられる。同省によると、20年度のクマによる人身被害は140件超。うち「住宅地・市街地」と「農地」がともに2割近くを占め、過去5年間で最多となるなど、対応が急務となっている。