• ツイート
  • facebook
  • hatena-bookmark
  • コメント

「増税前解散」岸田首相が初言及 求心力回復へ引き締めか

2022年12月29日07時23分

首相官邸に入る岸田文雄首相=28日午前、東京・永田町

首相官邸に入る岸田文雄首相=28日午前、東京・永田町

 首相が衆院解散・総選挙について、防衛費増額のための増税前に踏み切ると初めて言及した。増税は早ければ2024年とされており、解散時期は同年9月の首相の自民党総裁任期切れに伴う再選戦略とも密接に絡む。この時期の首相発言について自民党内では、「常在戦場」への覚悟を示すことで、陰りの見える求心力を回復させたいとの意図を読み取る向きもある。

防衛増税までに次期衆院選 年始の内閣改造は否定―岸田首相

 「国民に負担をお願いするスタートの時期までには選挙はあると思う」。首相は27日夜のBS番組でこう語った。
 増税について、政府は23日に閣議決定した税制改正大綱で「24年以降の適切な時期」と幅を持たせた。衆院議員の任期満了は25年10月だが、同年夏には参院選もあるため、首相発言を「増税の是非について解散・総選挙で国民の信を問う」と解釈すれば、参院選より前、24年までの解散を念頭に置いている可能性が高い。参院選イヤーの衆院解散は公明党の反対などを踏まえ、避けてきた経緯があるためだ。
 同年9月には首相の党総裁任期も切れる。総裁選前に衆院を解散して自民党を勝利に導き、無投票再選を狙う―というのは、常にささやかれる戦略パターンの一つと言える。
 発言について、首相に近い閣僚経験者は「党内の引き締め、野党のけん制、増税をする考えを貫くという国民への宣言だ」と解説。自民党中堅も「いつでも解散できることをアピールし、党内の緊張感を高める狙いだろう」との見方を示した。
 首相発言の呼び水となったのは、党内最大派閥で増税反対派の牙城である安倍派幹部の政調会長だ。萩生田氏は25日の民放番組で、増税について「明確な方向性が出た時は国民に判断してもらう必要も当然ある」と表明。新たな負担を強いる以上、国民に信を問うべきだというのは正論で、首相も否定できなかった可能性がある。
 萩生田氏は首相が信頼を置く党幹部だが、生前、防衛費増額の財源に赤字国債発行を唱えた安倍晋三元首相の腹心だったとあって、増税への立場は首相と異なる。首相の専権事項とされる解散権に踏み込んだ萩生田氏の発言に、別の党幹部が「あんなことを言わせていいのか」と首相に詰め寄る場面もあったという。
 首相自ら解散時期に言及する異例の事態を受け、周辺は28日、火消しに追われた。側近の官房副長官は民放番組で「重大な決定をする時に、手前で国民に判断いただくことも、結果について判断いただくことも両方あり得る」と強調。政府高官も「税が上がる前に選挙があることも、可能性としてあり得ると言っただけだ」と沈静化を図った。

関連記事

こんな記事も

政治用語

政治

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ