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増税か赤字国債か 防衛財源、識者に聞く

2022年12月28日07時08分

インタビューに答える東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹=20日、東京都内

インタビューに答える東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹=20日、東京都内

 政府は防衛力強化のため2023年度から5年間の防衛費総額を43兆円に増やし、法人税、所得税、たばこ税の増税や決算剰余金などを財源に充てる方針だ。しかし、増税時期の議論は先送りされた。復興財源の一部を転用する仕組みには国民から異論が多く、先進国で最悪と言われる財政状況でも与党から赤字国債の活用論がやまない。国際情勢が緊迫する中でいかに防衛財源を確保すべきか。東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹とBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストに聞いた。

防衛増税に「理解を」 経済界へ呼び掛け―岸田首相

 
 ◇フィクション含む防衛財源
東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹
 ―今後5年間の防衛力の強化と財源が決まった。評価は。
 防衛力強化は必要だと思う。ただ内容と予算、財源の三つをセットで決めると言っていたのに、そうなっていない。まず国内総生産(GDP)比2%が決まり、その後5年間の防衛費を43兆円にすることが、岸田文雄首相と財務、防衛両相で決まった。(防衛力強化の)内容は議論していない。国民が怒るのはすごく分かる。中身が決まっていないのに、請求書だけ押し付けるのは絶対おかしい。まず何に使うかを議論しなければ、増税は無理だ。
 ―首相は借金を回避したと説明したが。
 財源スキームには、フィクションのような部分も含まれている。2027年度に22年度比で約4兆円上積みするが、1兆円強の増税以外は、いつでも赤字国債に置き換わり得る。
 ―どういうことか。
 例えば、(4兆円のうち)7000億円は決算剰余金を充てるという。だが決算を締めてみないと、税収が上振れするかどうかは分からない。さらに剰余金は災害復旧費や景気対策を裏付ける補正予算の財源であり、それがなければ補正の財源は赤字国債になる。
 ―復興特別所得税の転用にも批判がある。
 東日本大震災の復興財源に影響を及ぼすものではないが、誤解を生じさせた。所得税は、金融所得課税の見直しでやるべきだった。岸田首相は「新しい資本主義」で(所得が1億円を超えると税負担率が減る)「1億円の壁」を問題にしてきており、金融所得課税は格差是正の効果も大きい。財産が多く、戦争になったら失うものが大きい人たちの負担を多くすることに国民の支持が得られないとは思わない。政権の支持率が低下し、そこまで踏み込む力がなかったのだろう。
 ―防衛論議を振り返って。
 あまり言われていないが、防衛費をGDP比2%にするということは、分母の経済が大事だということだ。GDPが落ちれば防衛費も減ってしまう。防衛予算の規模にばかりこだわる人はそこを認識すべきだ。防衛装備だけでなく、経済を活性化することが結果的に防衛力につながる。

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