「世界のごみ捨て場」アタカマ砂漠 生態系に危機的影響 チリ

2022年12月26日11時40分

【イキケAFP=時事】生命が存在するとは思えないほど荒涼とした風景が広がるチリのアタカマ砂漠には独自の生態系が存在している。しかし今、世界中から集まるごみの山によって、その繊細な生態系が脅かされている。(写真はチリ・アタカマ砂漠に捨てられた廃車)
 アタカマ砂漠の少なくとも3地域は、衣料品や靴、タイヤ、廃車の墓場と化している。砂漠の町アルトオスピシオのパトリシオ・フェレイラ町長はAFPの取材に対し、「もはや世界のごみ捨て場だ」と嘆く。
 環境NGO「エンデミック・ルーツ」の代表、カルメン・セラーノ氏は、アタカマは「資源を搾取し、私腹を肥やす」には都合の良い「草木も生えない不毛の地」と思われていると批判する。

■世界的な意識の低さの犠牲に
 チリは以前から欧州、アジア、米国の古着や売れ残りの衣料が集まる拠点で、それらは南米各地へ転売されるか、砂漠に捨てられている。昨年は、世界中から4万6000トンを超える古着がチリ北部のイキケ免税区域に流れ込んだ。
 化学物質を素材とし、生分解に200年もかかるこうした衣類が土壌や大気、地下水を汚染していると環境活動家は指摘する。衣類の山に火が付き、有害物質を排出することもある。
 フェレイラ町長は、「世界的な意識の低さ、倫理的責任の欠如、環境保護への無関心」のせいだと嘆く。「私たちの土地は犠牲にされていると感じます」

■火星に近い地形
 広さ約10万平方キロのアタカマ砂漠は、800万年以上前から地球で最も乾燥した場所となっている。
 中でも最も乾燥しているのはユンガイ地区で、基本的に水がなく、太陽が激しく照り付け、栄養となるものもほぼない。しかし、この厳しい環境でも微生物の存在は確認されている。科学者たちは、こうした微生物に地球や他の惑星での進化や生存の秘密が隠されている可能性があると考えている。
 米航空宇宙局(NASA)はユンガイ地区を地球上で最も火星に近い地形と見なし、探査機のテストに利用している。

■極めてもろい生態系
 アタカマ砂漠の降雨量はごくわずかだが、広い範囲が霧で覆われるため、地球上で最も生命力の強い地衣類、菌類、藻類などは育つ。また数年に一度、例年以上の雨が降ると、色鮮やかな「砂漠の花畑」現象が見られる。
 生態学や生物多様性を研究する現地NPOの研究員でサボテン専門家のパブロ・ゲレロ氏は、アタカマ砂漠の生態系は「極めてもろい」と話し、「降水量や霧のパターンの変化や減少が生物種に直ちに影響します」と説明した。
 ゲレロ氏は、汚染、気候変動、人の定住の影響で、すでに「絶滅したと思われるサボテン種もある」と言う。「残念ながら(環境は)近年、非常に大きな規模で着実に悪化しています」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕

関連記事

こんな記事も

ワールドEYE


ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ