アベノミクス、修正探る岸田首相 日銀決定に影響か―「機動的な運営」先月共有
2022年12月22日07時10分
日銀が長期金利の上限を引き上げ、事実上の利上げに踏み切ったのは、柔軟な金融政策に向けて共同歩調を促す岸田文雄首相の意向が影響したとの見方が出ている。急激な円安が物価高に拍車を掛け、政府内には2013年に始まったアベノミクスの「異次元の金融緩和」は修正が不可避との認識が広がる。来年4月の黒田東彦総裁の任期満了に伴う人事を経て政策がさらに修正されるかが焦点となる。
首相は11月10日、黒田総裁と首相官邸で約40分間会談。この場で両氏は「密接に連携しながら経済・物価情勢に応じて機動的な政策運営を行う」方針で一致した。首相周辺は「トップ同士が手を握った延長線上に今回の決定がある」と語る。黒田氏からは決定事項について首相に電話で連絡があったという。
日米の金利差拡大を受けて今年一気に進んだ円安は、ウクライナ情勢と相まって物価高に追い打ちをかけた。政府は30兆円近い補正予算編成による財政支出で対応したが、「棒を飲んだような」(首相周辺)硬直的な金融政策を続ける日銀に不満もくすぶっていた。
政府内では2%の物価上昇目標を明記した13年の政府と日銀による共同声明の見直し論も浮上。「ポスト黒田」をにらみ、異次元緩和の修正へ布石を打とうとしているとの観測も根強い。
首相は金融緩和政策を修正する場合、アベノミクスの継承を主張する自民党保守系への目配りも求められる。その一つである「責任ある積極財政を推進する議員連盟」に所属する中堅議員は21日、「黒田氏が本格的に利上げを迫られる前に先手を打った」と指摘し、アベノミクス修正との見方に反論。安倍氏側近だった萩生田光一政調会長は記者団に「黒田氏も利上げではないと言っている。日銀としての判断だったと思うのでそれを尊重したい」と語った。