汚職対策、徐々に前進 ロシアの影響力排除狙う―ウクライナ
2022年12月20日07時04分
【キーウ時事】欧州連合(EU)加盟を目指すウクライナにとって、大きな障壁となっているのが政財界にはびこる腐敗だ。近年では汚職専門の捜査機関を設置するなど、撲滅へ徐々に前進してきたが、一連の対策はEU加盟だけが目的ではない。ロシアによる政治家や役人の買収工作を防ぎ、その影響力が浸透するのを食い止めるためでもある。
「汚職撲滅に向けた改革を妨害しようとしている国が一つだけある」。ウクライナ国家汚職防止局(NACP)のオレクサンドル・ノビコフ局長は「それはロシアだ」と断言した。
ノビコフ氏は、ロシア連邦保安局(FSB)が侵攻前、ウクライナの議員に多額の賄賂を渡し、軍の弱体化を進めさせようとしていたと明かす。そうした事例は他にも存在し、ロシア軍が侵攻開始当日にチェルノブイリ原発を掌握できたのも、守備隊に内通者がいたためとされる。
ウクライナは2014年以降、NACPや反汚職特別検察官室などを相次いで立ち上げた。18年に高等反汚職裁判所を設置し、今夏には汚職防止戦略を策定。親ロシア派議員らの抵抗に遭いながらも、少しずつ取り組みを進めてきた。
反汚職NGOが毎年公表する各国の汚職レベルに関する指数で、ウクライナの「清潔度」は14年に世界約180カ国中142位だったが、21年は122位に上昇した。
ただ、いまだ改善の余地は大きい。ウクライナに進出する外国企業の幹部は「特に裁判官や司法の腐敗が、ビジネス上のリスクになっている」と話す。戦争が終われば多数の外国企業が復興事業に参入するのは確実で、いずれもウクライナ政府の汚職対策を注視している。