起業家の再投資、非課税に スタートアップ支援を大幅拡充―税制改正
2022年12月17日07時27分
岸田政権が5年で10倍増を目指すスタートアップ(新興企業)育成策は、資金調達から「出口戦略」までを一気通貫で強力に支援する内容となった。大手企業との連携を含めて成長への多様な選択肢を用意。革新的な技術・サービスを持つ新興企業が持続的に生まれる環境を整備し、日本経済の活性化につなげたい考えだ。
「成長と分配」具体化に重点 政権の看板政策、格差是正も―税制改正
目玉は、起業家が自ら保有する株式を売却して別のスタートアップに投資した場合、投資額全額を最大20億円まで非課税とする税優遇。大胆な措置を講じ、事業に成功した起業家が、後輩起業家を資金面で支える好循環をつくる。
大企業発のスタートアップ育成に向け、事業分離にかかる税負担を緩和する「スピンオフ(分離・独立)税制」も拡充する。これまで親会社との完全な分離のみを優遇してきたが、資本関係を残した「部分分離」も対象に追加。親会社から資金、ノウハウ両面でサポートを受けながら、段階的に独立を目指せるようになる。
従業員の労働意欲を高めるため、事業成功時の自社株売却益を得やすくする「ストックオプション(自社株購入権)」も強化。税制上の優遇措置を受けられる期間を最長15年に広げ、事業化に時間がかかり、大規模な資金が必要な研究開発型スタートアップの社員にもインセンティブ(動機付け)が及ぶようにする。
スタートアップへの投資資金を回収する段階となる「出口」の選択肢も用意した。大企業がスタートアップの株式の過半を取得した場合、取得額の25%を課税所得から控除できる措置を設け、法人税負担を軽減。新規株式公開(IPO)による資金確保だけではなく、大企業の経営資源を活用する形の「再出発」が可能となる。
このほか有望なスタートアップの海外流出を防ぐため、企業が資金調達を目的に発行する暗号資産(仮想通貨)のうち、自社で保有している分は決算期末の時価評価課税対象から除外する。財務基盤が不安定なスタートアップを支える。