鶏卵価格に影響も 鳥インフル大流行
2022年12月16日07時07分
致死率の高い高病原性鳥インフルエンザが大流行している。15日確認された今季35例目の青森県三沢市の採卵鶏農場では、殺処分数が過去最多の約137万羽に上り、全国の殺処分は10月下旬の初確認から約1カ月半で累計600万羽を超えた。関東と東北に出荷している同市での発生により、業界関係者は「供給・価格両面に一段と影響が出る恐れがある」と懸念している。
鳥インフルは主に、ウイルスを運ぶ渡り鳥が国内に飛来する10月ごろから翌年春にかけて発生する。しかし、今年は世界的な流行を背景に、これまでに例がない9月下旬に野鳥での感染を確認。農林水産省は都道府県に対し、農家に防疫対策の徹底を周知するよう呼び掛けていたが、家禽(かきん)でも初めて10月中に発生した。
感染が相次ぐ鹿児島県では今季、野鳥のツル1200羽以上の死亡が確認された。鳥インフルに詳しい鳥取大農学部の伊藤寿啓教授は、「ウイルスを持った渡り鳥が例年よりも多く日本に飛来している」との見方を示している。
農業関係者は「野鳥は養鶏場の上空も飛んでおり、ふんを落としている。感染しやすい環境にある」と声を潜める。採卵鶏を飼育する生産者は、相次ぐ鳥インフルの発生に「これまでの防疫対策では間に合わない発生数で、強い危機感を持っている」と表情を曇らせる。
JA全農たまごの相場情報によると、卵の卸売価格の目安となる基準値は、15日時点で1キロ当たり280円(東京、Mサイズ)と9年ぶりの高水準。昨年12月の平均価格と比べても3割増しだ。餌代の高騰に加え鳥インフルが頻発していることが背景にあるが、今回の大規模な殺処分が価格高騰に拍車を掛けかねない。