核融合で「科学的進展」 エネルギー実用化に一歩―米
2022年12月14日05時07分
【ワシントン時事】米エネルギー省は13日、核融合反応をエネルギーとして活用するための「科学的な進展」があったと発表した。将来の気候変動やエネルギー問題の解決につながる可能性があり、今後さらなる進展に注目が集まりそうだ。
核融合反応をエネルギーとする研究は1940年代から続いており、「地上に太陽をつくる」研究と言われてきた。今回の科学的進展は実用化に向けた一歩となり、エネルギー省のグランホルム長官は記者会見で「画期的な成果だ」と強調した。
同省によると、ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の科学者らのチームが5日、レーザーを使った実験で、核融合のために投入されたよりも多くのエネルギーを生成することに初めて成功したという。
核融合は、二つの軽い原子核が融合して一つの重い原子核を形成する際にエネルギーが放出される原理を利用している。化石燃料と異なり、気候変動の原因となる温室効果ガスを排出しない。また、核分裂を利用する原子力エネルギーよりも安全性が高いとされる。
核融合の発電への応用を目指す国際プロジェクトも進んでいる。日本も参加し、フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)は2025年の運転開始を目指している。
ただ、実用化には核融合反応によるエネルギー生成を1回だけでなく、継続して実現する必要があり、科学的・技術的な困難が残っている。LLNLのキム・ブディル所長は「50年かかるとは思わないが、数十年はかかる」としている。