猛威振るう鳥インフル 過去最多ペースで拡大―ニュースQ&A
2022年12月12日15時21分
致死率の高い高病原性鳥インフルエンザが猛威を振るっている。家畜伝染病とされ、ウイルスを保有する渡り鳥が飛来する秋から翌年春にかけて発生しており、今季は初めて10月に確認。過去最多だった2020年度シーズンを上回るペースで拡大しており、12月12日時点で17道県34例に及ぶ。
―鳥インフルエンザとは?
A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気で、野鳥のフンや死骸などを通じて感染する。家畜伝染病予防法により、病原性やウイルスの型で高病原性と低病原性を区別。高病原性は感染力が強く、感染の疑いがあると判断されれば、同法に基づき発生農場で飼育する鶏などの殺処分や埋却といった防疫措置を行う。
―感染が急拡大している。
今季はこれまでで最も早い10月28日に岡山県と北海道で感染を確認、既に34例発生した。殺処分された鶏などは470万羽を超え、最多だった20年度シーズンの約987万羽の半数に届く勢い。鶏の餌代高騰で上昇傾向にある鶏卵の価格を押し上げる要因にもなりそうだ。
―なぜ今年は多いのか?
世界的な流行が背景にある。欧州では今年、渡り鳥がいなくなる夏場にも感染が断続的に発生したほか、米国は過去最多の殺処分数を更新した。国内も既に昨シーズンの発生数を上回っており、初めて感染が確認された県も3つある。
疫学調査を行った専門家は「全国的に過去に類を見ないほどに感染リスクが高い状況にある」と指摘。養鶏場での感染が続く鹿児島県で野鳥の鶴が1000羽以上死んだほか、水鳥の多い鳥取県でも「今年は感染力が強いようだ」(平井伸治知事)との報告があった。
―防疫対策をしているのでは?
野鳥や小動物が防鳥ネットの穴から侵入したり、農場を出入りする車両が運んだりする恐れがある。野村哲郎農林水産相は「長靴の交換といった基本的な衛生管理が守られていない例も多い」と防疫対策の徹底を求めた。
―ヒトにもうつるのか?
これまで、家禽(かきん)の肉や卵を食べて鳥インフルに感染した例はない。食品安全委員会は、食品を十分に加熱して食べれば感染の心配はないと説明。農水省は死んだ野鳥を見つけた際には、素手で触らないよう呼び掛けている。