半導体投資競争が加速 TSMC、米で最先端工場―中国に対抗
2022年12月08日07時10分
【ワシントン、台北時事】半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、最先端半導体の米国生産に初めて乗り出す。経済安全保障の観点から半導体の自国生産の重要性が高まる中、中国とハイテク覇権を争う米国にとっては大きな一歩で、半導体産業への投資競争が加速することになりそうだ。
台湾TSMC投資「米史上最大級」 5.5兆円工場を歓迎―バイデン大統領
TSMCは6日、米西部アリゾナ州で建設中の工場の近くに、世界でも量産体制が確立していない最先端の回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)の工場を新設すると発表。投資総額を当初計画の3倍超の400億ドル(約5.5兆円)まで引き上げる。外国からの対米直接投資として史上最大級となる。
「米国が強固なサプライチェーン(供給網)を築けば、同盟国や友好国も協力していこうということになる」。バイデン米大統領は同日、TSMCがアリゾナ州の工場予定地で開いた式典で誘致の成果を強調した。TSMCは最先端半導体の生産で世界シェア9割を握るトップ企業で、半導体投資競争における「台風の目」だ。
米中対立を背景に「台湾有事」のリスクが高まる中、米国は半導体生産が集中する台湾、韓国、日本と共に「半導体同盟(Chip4)」の結成を目指す。TSMC創業者の張忠謀氏は式典で「地政学的な変化」を念頭に対米投資を拡大すると語った。
米国は補助金をてこに半導体の国産化を急いでいる。政府介入による産業政策をタブー視してきた従来方針を覆し、8月に成立した半導体補助金法に総額527億ドルの補助金を盛り込んだ。日本政府もTSMCなどが熊本県に建設する半導体工場に最大4760億円の補助金を出す計画だ。
米半導体工業会(SIA)の推計によると、中国政府が過去20年間に自国の半導体産業に投じた補助金は500億ドルに達するが、最先端の3ナノ製品を量産できるレベルにはまだない。バイデン氏は「米国は世界経済をリードする上で有利な立場にある」と語り、対中競争に打ち勝つ決意を示した。