新紙幣、24年度発行へ着々 キャッシュレス時代に登場―ニュースQ&A
2022年12月05日15時38分
2024年度上期に予定する新紙幣の発行に向け、日銀が読み取りテストを行うなど、準備が着々と進んでいる。20年ぶりとなる紙幣の刷新では、3次元(3D)ホログラムなど最新の偽造防止技術を導入。渋沢栄一が1万円札の顔となる。現金を使わないキャッシュレス決済の普及により紙幣の役割変化も指摘される中での新紙幣登場となる。
―紙幣刷新の目的は。
巧妙化する偽造・犯罪防止が最大の目的だ。警察庁によると、21年に1万円札だけで2075枚の偽札が見つかっている。現在の紙幣の流通が始まったのは04年で、偽造防止のための技術向上は欠かせない。
―新紙幣のデザインは。
新紙幣の肖像は、1万円札が日本の資本主義の礎を築いた渋沢栄一、5千円札が女性教育を推進した津田梅子、千円札は日本近代医学の先駆者である北里柴三郎を採用した。採用時の麻生太郎財務相は「国民に広く親しまれ、認められている明治以降の人物」で、「軍人や政治家ではない」ことを選定理由として挙げた。
―最新技術も導入されている。
傾けると肖像が立体的に浮かび上がる3Dホログラムを世界で初めて採用したほか、透かしの部分の背景には高精細な模様を導入するなど多くの最新技術が盛り込まれる。指の感触によりお札の種類を識別できるマークの形状や位置を変更し、視覚障害者がお札の違いをより判別しやすくしたのも特長。額面の数字も大型化される。
―準備状況は。
今年6~7月に、国立印刷局で新紙幣3種類の本格的な印刷を始めている。11月下旬のテストでは3種類の見本券を使い、自動販売機やレジなどの読み取り機器が正しく作動するか検証した。もっとも、今の紙幣も引き続き利用できるので、財務省は「古いお札は使えなくなる」などと現金をだまし取る詐欺行為に注意するよう呼び掛けている。
―キャッシュレス決済も普及しているが。
日本では現金志向が強く、流通する紙幣は今なお増加傾向にある。財務省は、キャッシュレス決済手段を持たない消費者がいるほか、災害・停電など非常時の決済手段でもあるため、現金の重要性は変わらないと説明している。