防衛費増額、財源捻出あの手この手 コロナ対策費、特会剰余金が浮上
2022年12月01日22時12分
政府は1日、防衛費増額に向けて財源を捻出しようと、使われていない新型コロナウイルス対策関連費や、為替介入の資金として管理されている外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金の活用案などの本格的な検討に入った。
防衛費、5年40~43兆円 次期中期防で大幅増―政府・与党調整
財務省幹部は「歳出改革の徹底は増税の大前提だ」と強調する。コロナ対策の病床確保のために多額の補助金が支給されており、国公立病院を運営する二つの独立行政法人の積立金は約1500億円に拡大。所管する厚生労働省に対し、財務省は早期の返納を求めた。
また、外為特会の毎年度の利益に当たる剰余金の活用も政府は視野に入れている。米国債の運用収入などによる剰余金のうち7割を目安に、例年翌年度の一般会計に繰り入れている。2022年度の繰り入れは約6割の約1.4兆円だが、過去には全額繰り入れた事例もある。国による貸付制度である財政投融資の特別会計の積立金(21年度末時点で約1.2兆円)の一部を活用する案も有力だ。
岸田文雄首相は27年度に防衛費と関連経費を合わせて、国内総生産(GDP)比2%に達するよう予算確保を鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に指示。目標達成には4兆円以上の増額が必要だ。
与党内では法人税、所得税、たばこ税などの増税論が浮上しているが、自民党の世耕弘成参院幹事長は1日、積極財政派の会合で「財源確保は責任ある姿勢として必要だが、イコール増税では絶対にない」と主張。自民党税制調査会の塩谷立小委員長は同日、派閥会合で「現状からすると、最終的に安定財源が年内に決着できるかは本当に難しい」と述べるなど、調整は難航しそうだ。
一方、自民党内では、国債を一部借り換えながら60年間で完済する「60年償還ルール」の撤廃を求める声もある。撤廃して借り換えを増やせば、毎年度の国債償還に充てる予算を減らし、その分防衛費に回すことができる。同党の萩生田光一政調会長も11月30日、国債の償還費用などを管理する国債整理基金特別会計の活用に言及した。