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岸田首相、「分配」の理念後退 新資本主義、投資促進に傾斜

2022年11月29日07時09分

「新しい資本主義実現会議」で発言する岸田文雄首相(手前から3人目)=28日午後、首相官邸

「新しい資本主義実現会議」で発言する岸田文雄首相(手前から3人目)=28日午後、首相官邸

 政府は28日、首相の看板政策「新しい資本主義」の具体策となる「資産所得倍増プラン」を正式決定した。ただ、その中身は株式など金融商品への投資促進策が中心。首相が就任以来掲げてきた格差縮小のための「分配」や「所得倍増」の理念は後退が鮮明になった。

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 首相は同日夕の新しい資本主義実現会議で「分厚い中間層を形成する上で、家計の金融資産所得を拡大することが大切だ。資産運用収入の倍増を見据える」と語った。
 同プランは、の恒久化が柱。非課税期間を無期限とし、投資上限額を引き上げる。
 政府は「中間層の底上げ」につながると主張する。「中間層が投資しやすい環境を整備すれば、家計の金融資産所得を拡大できる」(同プラン)との理屈だ。これからNISAを始めようという人の知識不足や不安の解消に向け、「中立的なアドバイザー」整備もうたう。
 ただ、実現は容易ではない。金融庁が昨年実施した調査によると、投資未経験者の割合は低所得層ほど多く、理由は「余裕資金がないから」が57%でトップだった。今後、与党で議論される投資上限額の引き上げ幅によっては、富裕層ほど潤う状況も招きかねない。
 首相は、1年前の自民党総裁選で「成長と分配の好循環」による格差是正を、経済政策の中心に据えた。だが、当時訴えた令和版「所得倍増」のスローガンは「資産所得倍増」に置き換わり、今年10月の所信表明演説では「分配」の言葉も消えた。
 「分配をもっと強く打ち出さなければならないのに、首相が何をやりたいのか分からない」。変質する理念に、側近議員からも不満の声が漏れる。

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