ツイッター消滅なら記者に打撃 豊富な情報源、依存に警鐘も
2022年11月25日07時06分
【パリAFP時事】米ツイッターが消滅することになれば、豊富な情報源として利用してきた記者たちほど割を食う者はいない―。実業家イーロン・マスク氏が先月買収し、膨大な数の従業員を解雇して以降、崩壊を危惧する声が高まっているツイッターだが、もはや多くの記者にとって「手放せない」(英ロイタージャーナリズム研究所のニック・ニューマン氏)ものになっている。
ニューマン氏は「ツイッターは仕事の上で、非常に重要な役割を果たしている」と指摘。ツイッターが流行し始めた2008年と09年、英BBC放送に勤務していた同氏にとって「人々とつながる新しい手段」だった。しかし、次第にテロや自然災害発生時の情報源として、従来メディアの競合相手になった。「記者は必ずしも自分たちが第一報を伝えるわけではなく、背景を盛り込んだり、事実を検証したりすることが役割なのだと気付いた」(ニューマン氏)という。
ツイッターはまた、早朝も深夜も投稿して多くの記者を睡眠不足に追い込んだトランプ前米大統領のように、政治家や著名人の意見表明の場として、記者が依存することになった。
一方、記者のツイッター依存は多くの問題を生んだ。米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、ファルハド・マンジュー氏は19年、「ツイッターが米国のジャーナリズムを駄目にしている」と警告。「集団思考を優先し、記者の直感を短絡化させている」と訴えた。
ツイッターでは過激な主張がもてはやされ、多数派の声が黙殺されがちだ。学術誌「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」のマシュー・イングラム氏は、「ツイッターだけに注目していると、世界の見方がゆがむ傾向がある」と指摘。記者は「偽情報や中傷の嵐」にさらされていると語った。
ツイッターが消滅した場合の利点として、イングラム氏は「より伝統的な調査や報道の手法」への回帰を促す可能性があると説明。「それはきっと良いことだ」と付け加えた。