支えた家族「大地なら1番に」 壁乗り越え、代表キーマン―W杯サッカー・鎌田選手
2022年11月23日11時39分
サッカーワールドカップ(W杯)日本代表の鎌田大地選手(26)は、攻撃のキーマンとして活躍が期待される。しかし、そのサッカー人生は決して順風満帆ではなかった。「大地なら1番になれる」。そこには常に家族の支えがあった。
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愛媛県伊予市出身の鎌田選手は、3歳でサッカーを始めた。小学校卒業まで指導したFCゼブラキッズ代表の飯尾始さん(46)は、練習熱心だった鎌田選手の姿をよく覚えている。「3年生で6年生の試合に出るほど、ボールを扱うスキルが高かった。今と同じで周りを使うのがうまかった」と振り返る。
中学進学を機にJFAアカデミー福島を受験するが、最終選考で不合格に。号泣する鎌田選手を、父幹雄さん(53)は「評価するのは他人だから仕方ない」と励ました。ガンバ大阪のジュニアユースから誘いを受け、大阪府岸和田市の祖父母宅に身を寄せることになった。
失意を乗り越え、進んだ道だったが、新生活は思い通りにはいかなかった。あいさつの声が小さい、野菜を食べない―。思春期を迎えた鎌田選手の細かな言動が積み重なり、祖母は幹雄さんらに「これ以上は無理」と告げた。幹雄さんはすぐに大阪に向かい、「もうちょっと面倒を見てやってください」と頼み込んだ。
鎌田選手はその場にはいなかったが、自分のために土下座する父の姿を隠れて見ていた。「お世話になってんねんから、ちゃんとせなあかん」。幹雄さんからこう諭され、この日を境に祖父母からの苦情はなくなった。
中学3年間は急激な成長で体のバランスが崩れ、たびたび骨折に悩まされた。試合に出られない日が続き、「愛媛に帰りたい」とこぼしたこともあった。そんな鎌田選手を救ったのも、幹雄さんの言葉だった。「いいよ。でも大地だったらすぐに1番になれる。1番になってから帰ってきなさい」
ガンバユースへの昇格はかなわなかったが、京都の強豪・東山高校を経て、プロ入りを果たした鎌田選手。幹雄さんは「それぞれのタイミングで、目の前の壁や挫折を乗り越えてきた。子どもの成長がうれしい」とほほ笑んだ。