ストックオプション優遇「15年」 大企業によるM&A支援も―新興企業税制、大枠固まる・政府
2022年11月19日07時16分
岸田文雄首相の看板政策であるスタートアップ(新興企業)育成を目指した政府の税制改正案の大枠が18日、固まった。社員らが株価上昇時に利益を得られるストックオプション(自社株購入権)の税制上の優遇期間を「15年以内」に延長。成長資金の供給を促すため、大企業による買収を後押しする法人税の軽減措置導入なども目指す。
新興投資の起業家に税優遇 保有株の売却益、非課税に―政府・与党
同日から本格化した与党税制調査会の審議で制度設計を詰めて、2023年度税制改正に反映させたい考えだ。
スタートアップは革新的な技術開発を通じ急成長を目指す企業。岸田首相は今年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、起業を5年で10倍に増やす方針を打ち出している。
ストックオプションは役員や従業員が一定の株価で自社株を購入できる権利で、株価が上昇すれば売却して報酬を得ることができる。政府の税制改正案では、税優遇を受けられる権利行使期間を現行の「10年以内」から「15年以内」に延長。事業化に長期間を要する研究開発型のスタートアップの役員や従業員が報酬を得やすくする方向だ。
成長資金の供給も促す。大企業が企業の合併・買収(M&A)を通じてスタートアップの株式の過半を取得した場合、取得価額の25%を課税所得から控除できる措置を検討する。スタートアップにとっては、新規株式公開(IPO)による資金調達だけでなく、大企業の経営資源を活用する選択肢が増えることになる。
併せて、事業に成功した起業家らが自ら保有する株式を売却してスタートアップに再投資する場合、その株式の売却益から投資額を控除できる非課税措置を創設。成長資金が循環する仕組みを整備する。
有望なスタートアップの海外流出を防ぐため、課税の在り方も見直す。企業が資金調達を目的に発行する暗号資産(仮想通貨)のうち、自社で保有している分は決算期末での時価評価課税の対象から外す。財務基盤が盤石ではないスタートアップの税負担が緩和されるよう調整を進める。