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「トランプ党」退潮鮮明 力示した女性と若者―分断は固定化・米中間選挙

2022年11月17日14時31分

トランプ前米大統領=15日、フロリダ州パームビーチ(AFP時事)

トランプ前米大統領=15日、フロリダ州パームビーチ(AFP時事)

  • バイデン米大統領=13日、プノンペン(AFP時事)

 では、記録的インフレや政権党に不利な過去の傾向をはね返し、与党民主党が予想外に健闘した。シンボルカラーにちなむ「赤い波」を起こすといわれた野党共和党だが、上院で敗れ、下院の議席増もわずかにとどまった。背景にはトランプ前大統領に対する有権者の嫌悪感が指摘され、近年「トランプ党」の色彩を強めた同党は岐路に立たされている。
 ◇共和「3連敗」
 「教訓は、私が8月に言った通り、上院では候補者の質が重要ということだ」。共和党上院トップのマコネル院内総務は15日、苦い顔で語った。トランプ氏が自身への忠誠を最優先し、経験不足の候補やスキャンダルを抱える候補を支援したことを暗に批判した発言だ。
 こうした「弱い候補」はペンシルベニアやアリゾナ、ネバダなど上院全体の勝敗を左右する激戦州で相次ぎ敗北した。ジョージ・メーソン大のジェレミー・メイヤー准教授は「資質の伴わない候補を選んだ共和党は、簡単に勝てるはずの選挙区でも苦戦した」と論評。2018年中間選挙、20年大統領選に続く「3連敗」に、党内では「トランプ氏は足手まといだ」と責任論が吹き荒れた。
 これまで何度追い詰められても岩盤支持層に支えられてきたトランプ氏だが、フロリダ州のデサンティス知事という「新星」の登場で状況は変わった。トランプ氏は15日、24年大統領選への出馬を正式表明。局面打開を図ったが、「もっと良い候補がいる」(ペンス前副大統領)とけん制する声が公然と上がり、大口献金者も離反するなど勢いは衰えている。

 ◇女性・若者が投票
 一方、人工妊娠中絶の権利を擁護する機運が選挙直前に盛り上がったことも、共和党の伸長を阻んだ。連邦最高裁は6月、中絶の憲法上の権利を否定。トランプ政権下で保守的な判事が複数任命されたことが背景にあり、同性婚など他の権利も覆されるという危機感が急速に高まった。
 こうした中、民主党は選挙戦で中絶の権利を最大の争点に打ち出した。判決以降、全米50州のうち46州で女性の新規有権者登録が男性を上回り、民主党支持の傾向が強い18~29歳の若者の投票率も、過去2番目の高さを記録した。
 ◇団結へ問われる本気度
 民主党には思わぬ「勝利」に祝賀ムードが漂う。バイデン大統領は「民主主義の力強さと回復力を示した」と手応えを語り、シューマー上院院内総務も「国民は共和党の過激主義者を拒絶した」と声を弾ませた。
 だが、政権を取り巻く環境は楽観できない。共和党が24年大統領選を視野に、議会で対決色を強めるのは必至だ。さらに出口調査では、バイデン氏の再選出馬に67%が反対。今週80歳を迎えるバイデン氏には年齢の壁も立ちはだかる。
 獲得議席数を見れば、民主、共和両党の勢力は上下両院で伯仲した。米政治の分断は、政党支持の振れ幅がほぼないまでに固定化したとも言える。
 有権者は物価高や犯罪増、不法移民流入などの課題で民主党への失望も示した。選挙戦中、共和党トランプ派を「脅威」と切り捨てたバイデン氏だが、半数の国民の声に耳を傾けなければ、かじ取りは危うい。「国家団結へ全力を尽くす」と語る言葉の本気度が、任期後半に問われる。(ワシントン時事)

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