「経済学の巨星落つ」 白川前日銀総裁、恩師の小宮氏を悼む
2022年11月13日07時10分
東大名誉教授の小宮隆太郎氏が死去した。教え子の一人である白川方明前日銀総裁は12日、時事通信の取材に応じ、「経済学の巨星落つ」と恩師を悼んだ。主なコメントは以下の通り。
まさに巨星落つ。経済学が最も輝いていた時代の経済学者であり、一つの時代が終わった。最大の功績は、現実の日本経済の問題に対して、経済理論に基づく明晰(めいせき)な分析と政策提言を行ったことだ。
ゼミの指導教授であり、私の仲人も務めていただいたが、学生時代は「こわい」先生だった。ゼミではぎょろっとした目で「全然間違っているよ」と正されることがしばしばだった。現実観察のセンスは抜群。ある現象を見るとき、「小宮先生だったら、どう考えるだろうか」と思うことも多かった。
日銀の理事就任が決まったとき、「理事は政策を執行する立場。論破するのではなく、相手に理解を求めるのが君の仕事だ」とのメールを頂いたことを思い出す。「論争の人」のアドバイスだっただけに、非常にありがたかった。当時のわたしは議論に勝つことを意識しがちだったからだ。
「デフレが日本経済の問題なのではない。日銀に大胆な金融緩和を求めるのは間違っている」という論陣も張った。金融政策をきちんと論じなければならないという思いから、日銀批判派と支持派を集めて議論させ、「金融政策論議の争点」(小宮隆太郎+日本経済研究センター編)という本にまとめた。わたしも参加したが、今振り返ると、理論とデータに基づき金融政策を自由闊達(かったつ)に議論した時代を懐かしく思う。