一夜で4兆円増、与党に配慮 岸田首相容認、「財政規律」おろそか―総合経済対策
2022年10月28日07時10分
総合経済対策の規模を巡る政府・与党内の調整が27日、決着した。財務省の当初想定は、一夜にして4兆円程度も増額。閣僚交代の遅れや国会運営の混乱などで政権への不信が高まる中、岸田文雄首相が30兆円を主張する与党に配慮せざるを得なかったためだ。首相の歳出増容認は、財政規律が一段とおろそかになる懸念もはらむ。
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財務省は当初、対策の規模について、一般会計で25兆円程度とする方向で調整。首相は26日午後、鈴木俊一財務相から説明を受け、この額で「いったんまとまりかけた」(首相周辺)という。
ところが、首相から電話で見解を尋ねられた自民党の萩生田光一政調会長は、増額を要求。首相は同日夜、鈴木氏と再び会談し、「これでは足りない。世界経済の下振れリスクに対応できる対策を用意してほしい」と指示した。両氏は27日に改めて協議し、約29兆円とする方針が固まった。
背景には、経済・財政政策を巡る党内の路線対立がある。萩生田氏や、今回の対策について「30兆円が発射台」と訴えた世耕弘成参院幹事長は、積極財政の旗振り役だった故安倍晋三元首相の側近。首相率いる岸田派は伝統的に財政再建を重視しており、萩生田氏らには「安倍路線」転換への警戒感がある。
加えて、山際大志郎前経済再生担当相の更迭が後手に回り、2022年度第2次補正予算案の国会提出が会期途中にずれ込むなど、首相の政権運営に対する与党の不満は強い。閣僚経験者は「党の意向を踏まえて30兆円に近づけた」との見方を示した。
茂木敏充幹事長は27日の茂木派会合で「おそらく20兆円台後半の相当上の数字でまとまる。かなり充実した対策になる」と成果を誇示。政調幹部は「みんな頑張った」と語り、公明党幹部は「求めた政策が入った」と喜んだ。
ただ、財政悪化を懸念する声は、財務省だけでなく与党からも出ている。自民党の森山裕選対委員長は森山派会合で、経済対策が首相退陣の引き金となった英国を念頭に、「財政を考えて予算編成しないと(いけない)。外国のようにならないことが大事だ」と指摘。二階派ベテランは「何でもかんでも要求すればいいものではない」と同僚議員に苦言を呈した。