デフォルト拡大に「現実味」 新興国債務危機を懸念―元IMF副専務理事
2022年10月25日07時13分
【ワシントン時事】歴史的なインフレや急激なドル高を背景に、新興国と途上国の債務問題が深刻化している。国際通貨基金(IMF)で筆頭副専務理事を務めたジョン・リプスキー氏は、24日までに時事通信のインタビューに応じ、こうした重債務国のデフォルト(債務不履行)の拡大が「現実味を帯びている」と強い懸念を表明。20カ国・地域(G20)を中心とする国際協調枠組みの強化を訴えるとともに、最大の貸し手である中国の協力に期待を示した。
国際金融協会(IIF)によると、主要新興国の債務残高は6月1日時点で過去最高の100兆ドル(約1京4800兆円)に迫り、各国の国内総生産(GDP)の合計に対する比率は252%に達した。G20は2020年に、低所得国の債務減免を促進する「共通枠組み」を導入したが、減免合意に達した実績は無い。
リプスキー氏は、対外債務減免を調整するG20の共通枠組みと、日米など先進国主体の「パリクラブ(主要債権国会議)」について、「世界で最も貧しい73カ国に適用対象が事実上限定され、デフォルトに陥ったスリランカなどの新興国は含まれていない」と問題点を指摘し、適用対象を拡大すべきだと主張した。
中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に対しては、援助融資を盾に取り相手国への支配を強める「債務のわな」が批判の的となっている。リプスキー氏は、債務減免を渋る中国が貸し手責任を果たしていくことに期待を示した上で、「中国とパリクラブ加盟国の対立などの問題にも取り組むべきだ」と訴えた。