安保、資源で「準同盟」強化 中国を警戒、重なる思惑―日豪
2022年10月22日18時18分
【パース時事】日本とオーストラリアが安全保障協力を深化させる新たな宣言を打ち出したのは、インド太平洋地域で軍事力を背景に影響力を増す中国に対抗するためだ。約15年前に締結した共同宣言に中国の脅威を念頭に置いた文言はなく、今回の「改定」で現実の安保環境を踏まえた内容にリニューアルした。「準同盟国」と位置付ける豪州との連携強化で「増大するリスク」(新宣言)に備える。
安保緊急事態、相互に連携 中国念頭、15年ぶり安保宣言―日豪首脳会談
両首脳が新宣言に署名した22日はくしくも中国共産党大会の閉幕日と重なった。岸田文雄首相は共同記者発表で「安全保障、防衛協力をさらに深化させる充実した内容だ」と意義を強調。アルバニージー首相も「この画期的な宣言が地域に強力なシグナルを発信する」と息の合ったところを見せた。
日豪は07年3月に当時の安倍晋三首相とハワード首相が安保共同宣言に署名し、徐々に関係を進めてきた。ただ、豪州は中国との自由貿易協定(FTA)が15年に発効するなど、中国との貿易関係も重視してきた。
豪中関係は、新型コロナウイルスの発生源を巡り、豪州が20年に独立した調査を求めたことに中国が反発して冷え込んだ。今年4月には、安保上の「要衝」である南太平洋のソロモン諸島と中国が安保協定を締結するなど、豪州にとって中国が懸念材料となっている。
一方、日豪は21年、海上自衛隊の護衛艦が豪軍艦艇を警護する「武器等防護」を実施。自衛隊が米軍以外を警護するのは初めてだった。22年には日豪の部隊が互いの国を訪問する際の法的地位などを定めた「円滑化協定」で合意した。外務省幹部は「唯一の同盟国・米国を除けば、豪州は日本にとって特別な地位にある」と指摘する。
豪州側も米国、インドを加えた日米豪印4カ国の枠組み「クアッド」などを軸に、中国の覇権主義的な動きを押しとどめたい考えだ。
◇会談場所はLNG輸出拠点
日豪首脳が会談場所に選んだ豪州西部パースは液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石の輸出拠点として知られる。豪州は日本が輸入するLNGの約4割、鉄鉱石の6割を供給する一大資源国だ。
今回の訪豪は、ロシアのウクライナ侵攻に起因する原材料価格上昇への対策も重要テーマだった。岸田首相は共同記者発表で「協力をさらに進展させることで一致した」と資源・エネルギーの安定供給確保をアピールした。