出口なき財政拡大 脱炭素化と逆行も―経済対策
2022年10月15日07時15分
政府は月内にまとめる総合経済対策で、電気料金とガス料金の負担抑制策を盛り込む。ガソリンの補助金制度については来年1月以降も継続する。負担軽減策の拡大により財政支出が膨張するほか、岸田政権が重要課題に掲げる脱炭素化の取り組みに逆行する恐れもある。
ロシアによるウクライナ侵攻後、火力発電所の燃料や都市ガスの原料となる液化天然ガス(LNG)の国際価格の高騰が続く。電気料金は今年5月までの1年間で家庭用が約2割、企業用は約3割上昇。また、東京ガスの11月の標準家庭のガス料金は6461円となる見込みで、前年同月から約3割上昇する。
経済対策をめぐっては、与党内から「冬に向けて電気料金とガス料金の家庭・企業の負担を1割ぐらい抑える措置が必要だ」(自民党の茂木敏充幹事長)と手厚い支援策を求める声が強まっていた。国内の電力販売額は年間約14兆円、都市ガス販売額は同約3兆円で、政府が1割補填(ほてん)する場合、それぞれ1兆4000億円と3000億円もの財政支出が必要となる。
燃料費高騰と円安は収まる兆しがなく、電気・ガスへの支援策も長期化する可能性が高い。今年1月にスタートしたガソリン補助金も延長・拡充が繰り返され、12月分までの予算は約3兆2000億円に膨張している。
巨額の財政資金を投じてエネルギー価格を抑える施策は、家計・企業の省エネへの取り組みを鈍らせ、脱炭素化の流れに逆行しかねない。経済産業省からは「お金をばらまきまくっているが、緊急時だから仕方がない」(幹部)との声が漏れる。
英国ではトラス新政権が打ち出したエネルギー価格急騰対策や大型減税案をきっかけに、通貨ポンドや国債、株式が売られた。中央銀行が金融引き締めを行う中、インフレにつながりかねない財政拡張策が市場不安を招いた形だ。日本でも財政の悪化に懸念が強まっており、財務省幹部は「経済財政運営が市場の信認を失うと(英国のように)市場が鋭く反応する」と話した。