「命は自分で守って」 「大丈夫」意識根強く―台風被災の住民・福島
2022年10月12日13時35分
「防災の大原則は『自分の命は自分で守る』こと」。3年前の台風19号による豪雨で被災した福島市郷野目地区で町内会副会長を務める小野久雄さん(71)は、地域の防災のため奔走してきた。同地区は1986年の水害の経験から、住民の避難行動は早く、幸い死者は出なかった。しかし、避難の呼び掛けに「自分は大丈夫」と応じない住民もおり、限界を感じている。
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2019年10月の豪雨では、市内を流れる阿武隈川が増水し、支流の濁川にも逆流。堤防を越えた水が郷野目地区に浸入し、約130世帯が床上浸水した。「堤防決壊であっという間に周辺一帯の水位が上がった」と当時町内会長だった尾形武治さん(80)は振り返る。
豪雨災害後、福島県や国が決壊した堤防を高くするなどの治水事業を進める中、町内会でも体制を見直した。水害時の避難所が近くにないため、地元企業と協定を結び、建物の4階を非常時の避難先として確保。自力避難が難しい要支援者を事前に把握し、緊急時に誰が手助けするかを決めておくなど、備えに余念がない。
ただ、どれほど避難を促しても「自分は大丈夫」と断る人がいる。「非常時はみんな自分や家族が優先。誰かに助けてもらえると思ってはいけない。いつまでに、どこにどう逃げるかを自分の責任で決めておくべきだ」と小野さんは語る。
町内会では地震が起きた際も、自販機やブロック塀が倒れていないかの見回りや、住民の安否確認のための声掛けをしている。尾形さんは「災害時に地域でできるのは呼び掛けや情報発信だけ。最後に自分を守るのは自分ということを忘れないでほしい」と強調した。