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政府、「反撃能力」の検討加速 5年ぶり警報発令、課題残す

2022年10月05日07時09分

記者会見する松野博一官房長官=4日、首相官邸

記者会見する松野博一官房長官=4日、首相官邸

 政府は、北朝鮮が日本上空を通過する弾道ミサイルを発射したことを受け、「反撃能力」の検討を加速させる。与党内にも慎重論がある中、世論の風向きを見極めながら実現を探る。一方、5年ぶりに発令された全国瞬時警報システム()は、対象地域が二転三転するなど課題を残した。

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 「北朝鮮の核・ミサイル関連技術の著しい発展は看過できない。反撃能力を含めあらゆる選択肢を排除せず検討していく」。官房長官は4日の記者会見でこう語った。
 反撃能力は、ミサイル攻撃を未然に防ぐため発射前に相手の基地を攻撃する能力を指す。政府は憲法上許容されるとしながらも、専守防衛の観点から保有を否定してきた。自民党は相次ぐ発射を受けて4月、名称を「敵基地攻撃能力」から変え、政府に保有を要求。首相は、国家安全保障戦略など3文書を年末までに改定するのに合わせ、防衛費の増額と共に検討する考えだ。
 今回の発射について、防衛省幹部は「能力を見せつけて威嚇する狙いがある」と分析。首相官邸の関係者は、北朝鮮が10月にも核実験に踏み切るとの観測を踏まえ「今後が一層心配だ」と警戒感を示した。
 自民党国防族らは4日、反撃能力の必要性を口々に訴えた。元防衛相は記者団に「日本の防衛を確固たるものにするために反撃能力は持つべきだ」と強調。中谷元・首相補佐官は記者団に「撃ち返す能力を持っていないとこういう状態が続く」と述べた。
 もっとも、立憲民主党の国対委員長は記者団に「脅威は感じるが、冷静に効率的な防衛体制を議論すべきだ」とし、「過剰反応」と指摘した。専門家の間でも、膨大な費用がかかり相手の反撃を誘発する可能性が高いなどとして、懐疑的な見方がくすぶる。国民に「危機に乗じた動き」と受け取られれば政権不信につながりかねない。
 ◇東京にも警報
 一方、の発令は、発射から約5分後の午前7時27分。第一報は北海道と東京都の小笠原村など島しょ部が対象で、2分後の第二報で青森県と東京の島しょ部に変更された。だが、同42分に上空通過を伝えた先は北海道と青森。実際には青森上空を通過し、岩手県釜石市の東約3200キロに落下した。
 また、青森市などで防災行政無線を通じた住民への情報伝達に支障があり、対象外の東京都千代田区では逆に警報が伝えられたという。
 自民党の元幹事長は記者団に「良いことではない。オオカミ少年みたいな話で、国民が反応しなくなるのは非常に怖い」と語った。

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