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安倍氏国葬、法的根拠乏しく 手続き、弔意表明で論争―基準も不透明

2022年09月27日07時09分

【図解】国葬をめぐる論点

【図解】国葬をめぐる論点

 安倍晋三元首相の国葬をめぐり、岸田政権と野党の主張は平行線をたどった。政府は内閣府設置法を根拠に閣議で決定したが、国会への報告は約1カ月半後となり、了承の手続きも求めなかった。立憲民主党は「法的根拠や基準がない」と批判し、執行役員の欠席を決めた。国葬とした判断の妥当性や弔意表明の在り方などが10月3日召集予定の臨時国会で論点となりそうだ。

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 ◇放置された法整備
 「秋に国葬儀の形式で安倍元首相の葬儀を行う」。首相が国葬の挙行を表明したのは7月14日。安倍氏が参院選の街頭演説中に銃撃され、死亡した6日後だった。
 政府が法的根拠としたのが、内閣府の所掌事務として「国の儀式」を定めた内閣府設置法4条。「行政権」の範囲内で実施できると主張した。だが、同法は「国の儀式」の定義や対象を明示しておらず、立民や共産党などは「法的根拠にならない」と反発した。
 戦前は「国葬令」に基づき行われてきたが、1947年の現憲法施行時に失効した。67年の吉田茂元首相の国葬は閣議決定に基づく。68年の衆院決算委員会で当時の水田三喜男蔵相が「法令の根拠はない。何らか基準を作っておく必要がある」と答弁したものの、法整備は進まなかった。
 ◇国会関与なし
 政府は7月22日に国葬実施を閣議決定したが、「国権の最高機関」である国会への事前説明はなかった。ようやく国会に報告があったのは、9月8日の閉会中審査だ。
 立民の幹事長は9月25日の民放番組で「国葬というからには、国会の意見も聴かなければならない。吉田元首相の時も非公式に野党の意見を聴いた」と問題視。国民民主党は与野党党首会談を開いて説明するよう求めたが、実現しなかった。自民党からも「国会の議決が必要だ」(元幹事長)との声が上がった。
 政府は国葬とする理由として(1)憲政史上最長の政権(2)経済再生、外交などの実績(3)各国からの敬意と弔意の表明(4)選挙中の非業の死―を挙げた。
 これに対して野党は、首相経験者は一律に「内閣葬」とすることや、法整備を含め基準を策定することを提唱。首相は「その時々の政府が総合的に判断するのがあるべき姿だ」と応じなかった。
 ◇経費膨張?
 政府は各府省に弔意表明を求める閣議了解は見送ったものの、首相が葬儀委員長として国葬当日の弔旗掲揚や黙とうを各府省に求めた。野党は国葬自体が「事実上の弔意の強制」につながりかねないと批判。首相は「国民一人一人に喪に服することを求めない」と説明した。
 国葬の経費には全額国費が充てられる。政府は8月26日、会場費として約2億5000万円を予備費から支出すると決定した。だが、警備費や外国要人接遇費が含まれていないことを野党が突き、全容の公表を迫った。
 政府は9月6日、警備費に約8億円、接遇費に約6億円を見積もり、全体の経費は16億6000万円程度になるとの試算を示した。野党は積算根拠を明らかにするよう求めたが、政府は拒否。立民は「総額は膨らむ」(幹部)とみており、臨時国会で実際の支出額をただす方針だ。

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