自動車・家電、なぜ値上げ? 資源、エネルギー高騰響く―ニュースQ&A
2022年09月20日17時59分
食品類に加え、自動車や家電など耐久消費財の値上げが目立っている。ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源やエネルギー価格の高騰が響いており、今後も上昇傾向は続きそうだ。
―背景は。
エネルギー価格の上昇で、光熱費や輸送費などのコストが膨らんでいることが大きい。鋼材やアルミ、樹脂など幅広く原材料が値上がりし、円安も輸入コストの上昇を加速させた。さらに製造業では、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的にサプライチェーン(供給網)が混乱。昨年から半導体などの価格上昇が進み、最終製品に跳ね返った形だ。
―企業がコスト増に耐えきれなくなったのか。
部品など企業同士が取引するモノの値動きを示す国内企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は昨年から上昇が続き、8月には過去最高の115.1を記録した。コスト削減の企業努力で吸収して値上げを回避してきたが、これにも限界がある。中小企業の業績が圧迫されないよう、政府も取引価格の適正化を後押ししており、以前より価格転嫁が進みやすい状況だ。
―値上げはどのくらい広がっているのか。
自動車では日産自動車、三菱自動車、SUBARUなどが値上げを決めた。家電では、パナソニックやソニーのほか、韓国のLG電子など外資メーカーも今年に入って値上げを実施した。ただ、テレビや冷蔵庫などは、高機能製品の登場で価格が上昇している面もある。
―値上げしていないメーカーもあるか。
トヨタ自動車は値上げの方針を示していない。ただ、日本製鉄との間で、鋼材仕入れ価格の大幅な引き上げで合意。タイヤメーカー各社も値上げを表明しており、いずれトヨタの新車販売価格に影響が及ぶ可能性がある。今回の鋼材仕入れ価格の交渉結果は多くの産業に影響を与えそうで、値上げを表明していない家電メーカーも価格改定は避けられないだろう。
―今後の見通しは。
生産工程が長い耐久消費財は、原材料高の影響が食品などに比べて遅れて波及する傾向がある。円安が進行したため最終製品の値上がりは今後も続くとみられ、国民の生活水準維持のため賃金引き上げの必要性が一層高まっている。