「有事」現実味、備え急ぐ 早期配備・継戦能力を重視―防衛省概算要求
2022年09月01日08時00分
防衛省は31日、2023年度予算の概算要求を決定した。総額は過去最大の5兆5947億円。金額を示さない「事項要求」も多く盛り込んだ。緊迫するウクライナ・台湾情勢などを踏まえ、装備品の早期配備や継戦能力の向上を重視。日本周辺で現実味を帯びる有事への備えを急ぐ内容となった。
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事項要求の中には、射程を現在の百数十キロから1000キロ程度に伸ばす「12式地対艦誘導弾(SSM)」改良型を、当初予定から3年前倒しの26年度に運用開始する経費も含まれる。12式SSMは地上目標の攻撃も一定程度可能で、政府が検討する「反撃能力」の有力な手段の一つとなる。
陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替となる「イージス・システム搭載艦」は、設計とエンジン取得を事項要求。計2隻体制での運用を予定しており、1隻目は27年度末の就役を目指す。
浜田靖一防衛相は31日の省議で「1年でも早く必要な装備品を各部隊に届け、運用することが喫緊の課題だ」と強調した。
防衛省が体制整備を急ぐ背景には、台湾への軍事的圧力を強める中国の存在がある。近い将来の武力侵攻を懸念する声もある中、防衛省幹部は「台湾有事の日本への波及は不可避だ」と指摘する。
実際の有事を想定した場合、弾薬の確保など継戦能力の増強が不可欠だ。自衛隊は米軍が本土から応援に駆け付けるまでの数週間をしのぐための量を想定するが、現状は「恥ずかしいくらい足りていない」(自民党国防族)という。
こうした現状認識を踏まえ、今回の概算要求では弾薬について、22年度と同水準の1934億円分を確保した上で、さらなる積み増し分を事項要求。年末の予算編成に向け、調整を進める構えだ。