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根拠・基準、明確さ欠いたまま 政府、安倍氏国葬に国費

2022年08月27日07時35分

 岸田内閣は26日、安倍晋三元首相の国葬への全額国費支出を閣議決定した。戦前の「国葬令」が廃止されて以降、首相経験者の国葬は吉田茂氏の1例しかない。政府は「行政権」の範囲内で開催可能と主張するが、法的根拠や判断基準についての説明は明確さを欠き、論争の火種となっている。

〔写真特集〕吉田茂元首相の国葬

 官房長官は閣議後の記者会見で、憲政史上最長の在任期間などを理由として列挙。閣議決定に基づく国葬開催は「行政権の作用に含まれる」と正当性を強調した。
 閣議決定に基づき国葬を実施した1967年の吉田氏の例では、その法的根拠が国会審議などでたびたび問題になった。水田三喜男蔵相(当時)は翌68年、国葬に法令上の根拠はないと認め、「やはり何らかの基準をつくっておく必要がある」と発言した。
 69年には床次徳二総理府総務長官(同)が「法の制定を含めて検討したい」と踏み込んだが、藤田正明総務長官(同)は77年の答弁で「閣議決定によって行われるべきだ」と軌道修正。政府は現在もこの見解を引き継いでいる。
 首相経験者の国葬に関する基準の曖昧さは、その時々の政治情勢が政権の判断に入り込む余地を残した。
 75年の佐藤栄作氏の葬儀では、長期政権や沖縄返還実現、ノーベル平和賞受賞などを理由に、国葬を推す声もあった。しかし、当時の三木内閣は、内閣・自民党・国民有志による「国民葬」とすることを決定。国葬の法的根拠が不明確なことに加え、野党の抵抗が予想され、押し切れないとの判断があったとされる。
 松野氏は、首相経験者の葬儀の在り方について「これまでもその時々の内閣でふさわしい形を判断してきた」と強調。一方、国葬をめぐる国会審議にはいまだ応じておらず、その妥当性は客観的に判断しがたい。
 立憲民主党の代表は26日の記者会見で「法的根拠や基準がないものを認めるわけにいかない」と政府の姿勢を批判した。

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