熱海土石流、県と市提訴へ 盛り土対応に「過失」―犠牲者遺族ら来月にも・静岡
2022年07月03日22時42分
静岡県熱海市で昨年7月に起きた土石流災害をめぐり、犠牲者の遺族らは3日、崩落起点で造成された盛り土について行政の対応に過失があったなどとして、県と市を相手取り、8月末にも損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こすと明らかにした。
遺族らによると、神奈川県小田原市の不動産管理会社は2007年、盛り土の造成を熱海市に申請した。この際、提出された書類は災害防止策などの事項が空欄だったとし、遺族側は「形式的要件を欠いているにもかかわらず受理しており、市に過失があった」と主張している。
また、市は実際に造成された盛り土の高さが県条例の基準を超えていると知りながら、安全対策を強制する「措置命令」を出さなかったとも指摘。「違法な規制権限の不行使」に当たるとした。
県については、熱海市に是正を求めなかったことなどから「賠償責任を負う」とした。
遺族らは昨年9月、盛り土のあった土地の前・現所有者らに損害賠償を求める訴訟を起こしている。
熱海市の現場付近で開いた記者会見で、弁護団の加藤博太郎弁護士は「危険な盛り土の造成を許し、放置させた責任は免れない。土石流が発生して1年たったが、いまだ責任の所在が明らかになっていない」と述べた。
母親の陽子さん=当時(77)=を亡くした被害者の会会長の瀬下雄史さん(54)は「市の過失が大きいと考えている。盛り土の工事を停止させることができなかった」と話し、裁判が再発防止につながると訴えた。