岸田政権、成長へシフト 資産所得倍増で投資拡大―骨太・新資本主義
2022年06月08日07時11分
岸田文雄首相の看板施策「新しい資本主義」の実行計画では、経済成長重視へのシフトが鮮明となった。「貯蓄から投資」を促す「資産所得倍増プラン」を目玉政策に掲げ、企業へ成長資金が円滑に向かうことも狙う。
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昨年秋に発足した岸田政権は、1980年代以降に広がった競争原理を重視する新自由主義が格差拡大を招いたとの問題意識に立ち、分厚い「中間層」の復活を目指す分配戦略を重視した。分配の財源として、首相は当初、富裕層に負担を求める金融所得課税を強化する考えを示したほか、自社株買いへの規制の必要性にも言及した。
ただ、「株式市場を敵に回す政権」との印象が広がり、株価低迷を招いた。政権は金融所得課税強化を棚上げし、代わりに打ち出したのが「資産所得倍増プラン」だ。首相は5月、英ロンドンの金融街シティーでの講演で「インベスト・イン・キシダ(岸田に投資を)」と呼び掛けた。
実行計画では、半分以上が現預金で滞留する2000兆円超の個人金融資産が投資に向かう流れをつくるため、年末までに倍増プランを策定する方針を盛り込んだ。少額投資非課税制度(NISA)の非課税枠の拡充のほか、65歳未満となっている個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の加入対象年齢の引き上げが検討課題となる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「個人マネーを株式市場に誘導し、企業の成長と経済の活性化を目指すものだ」と評価する。
個人金融資産は高齢者に偏在する中、現役世代を中心に金融資産が100万円未満の世帯は2割を超える。大和総研の藤原翼研究員は「現役世代が資産形成できるよう、経済全体での賃金引き上げや職業訓練を通じたスキル形成による所得向上が必要だ」と指摘する。