瑞慶覧長敏・沖縄県南城市長
沖縄本島南部の東海岸に位置する沖縄県南城市。観光客が多い同島中部の西海岸とは一線を画す落ち着いた雰囲気を、瑞慶覧長敏市長(ずけらん・ちょうびん=63)は「近代的な開発がされていない『良い田舎』」と表現する。一方で「所得向上」を掲げ、雇用創出に向け企業誘致に意欲を見せる。
市の人口は増加傾向にあるが、市民の半数以上が市外で働いている。「緑が多いだけでは発展はおぼつかない。外に落ちているお金を戻す」と、雇用確保に向けた第2次産業の誘致を積極的に進めている。
その要として、土地利用の見直しに着手した。農業振興地域整備計画に定められた農用地の指定区域の一部除外を県と交渉。市が地権者と企業をマッチングさせつつ、まとまった土地を確保する。「中部西海岸が手狭になり、企業は東を向きつつある。企業からの移転の相談は多く、期待に応えたい」と意気込む。人口密集地でないことを逆手に取った戦略だ。
立地の相談は、物流や食品製造の関連施設が多い。企業が重視する那覇への所要時間がネックだったが、県が建設中の高規格道路の開通で解消できる見込みだ。「むちゃな開発は望まない」としつつ、最低限のインフラ整備は進める。
来年度から、国の新たな沖縄振興計画がスタートする。「まだまだ、ほど遠い」県の経済的自立のためにも東海岸の所得向上が欠かせないとみているが、現在の市民所得は県平均に達しておらず、「自分たちでメシを食うため、高賃金な雇用を生まないといけない」と訴える。
第1次産業の改革も見据える。畜産や酪農が盛んだが、牛の飼料を高価な国外産に頼る現状を問題視。「需要があるのにもうからず、子に継がせない悪循環がある」と指摘する。こうした課題の克服に向けて庁内で勉強会を重ね、年3回刈り取れる飼料用サトウキビに着目。「やり方次第でもうかる光が見えてきた」と、輸入依存から脱却して低コスト化を目指す。
「未開発」の魅力を生かすため、新型コロナウイルス禍で注目されたリモートワークや、休暇を取りながら働くワーケーションにも期待を寄せる。地元商工会が手掛ける既存の起業支援事業に市が参画するため、戦略の作成を検討課題に挙げ、「南城は地方で働ける時代にマッチしているし、時代が南城を求めている」と力を込める。
〔横顔〕日米の大学を出て英語講師に。民主党衆院議員を務め、玉城デニー知事とも親しい。
〔市の自慢〕「阿摩弥姑(アマミキヨ)」が離島・久高島に降り立ち、琉球王国を創り上げたとする「琉球開びゃく」神話の舞台。(2021/11/04-08:30)
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