上野俊市・鹿児島県さつま町長
「薩摩のくにのさつまブランドで地域のにぎわいを取り戻す」。4月に初当選した鹿児島県さつま町長の上野俊市(うえの・しゅんいち=58)は、農産物や特産品のブランド力を高めるための協議会設置に意欲を示す。2020年12月の出馬表明後に地域を積極的に回り、独居高齢者や空き家が増えたと実感。「地域を支える担い手世代を何とか呼び込み、育ててゆくのが先決」と課題を挙げ、「人口減は避けて通れない課題だが、災害が多発する中で老・壮・青が互いに助け合える絆を結び直すためにも知恵を絞りたい」と語る。
公約に掲げた「稼げる農林業の実現」に向け、広域合併農業協同組合「JA北さつま」の地域ブランド「薩摩のさつま」に着目。「名称を町全体で使用し、収入増につなげてゆく」ための協議会には、JA北さつま、農家や商工会など幅広く参加してもらい、「誰もが納得するしっかりとした認証基準をつくる」と語った。寒暖差が大きく県内有数の米どころとして知られるほか、九州一の産地を誇る南高梅「薩摩西郷梅」(登録商標)、国内で最も早く10月に収穫が始まる早掘りタケノコ、ほくほくした甘味が特徴のカボチャ、大粒のイチゴなど特産物は豊富だ。副町長時代の都市圏へのトップセールスを通じて「打ち出しが弱い。認知度とブランド力の向上にこれ(薩摩のさつま)ほど分かりやすいネーミングはない」と自信をのぞかせる。
担い手拡大の照準は基幹の農林業にとどまらない。地元サービス業者などに加え、進出している自動車部品や半導体関連企業をも巻き込んで「わが社の逸品」づくりを支援。「現状維持では変わらない。助成金の増額や税の優遇措置の拡充を検討する。思い切った予算化も必要になる」と表情を引き締めた。同町では外食大手向けの食材供給工場などで働く外国人技能実習生が400人を超え、推計人口1万9927人(5月1日現在)の2%を占めるまでになった。上野氏は、雇用創出の一方で多文化共生を今後の町政運営で重視し、「国籍を問わず住みやすい環境を整え、地域に溶け込んでもらう」と話す。
小中学校廃校跡への企業誘致で課題だった光通信網が町域全体で整備され、鹿児島空港まで大幅に往来しやすくなる「北薩横断道路」の全線事業化も決定。地域のにぎわいを取り戻す上で追い風となる。定住促進とともに交流人口拡大ではプロスポーツ合宿の誘致にも力を入れており、「地域でちらばっている観光ルートを結び、線を面にする滞在型の観光地づくりへ基礎を固めたい」と将来を見据えた。
〔横顔〕1981年旧宮之城町(現さつま町)役場入り。合併後に農政課長、副町長を歴任。趣味はランニングとロードバイク。町職員には「固定観念や前例主義を捨て、積極的に仕事を創り出してほしい」と呼び掛ける。
〔町の自慢〕川内川の清流両岸を乱舞するホタルを棹(さお)差し舟で観賞するツアーは幻想的。1級河川でのホタル乗船観賞は珍しく、5月中旬から1カ月ほどのシーズンは「黒毛和牛たけのこ丼」付きの予約が連日完売となる。高級和牛では全国に血統が受け継がれる著名種牛「平茂勝(ひらしげかつ)」を生んだ。(2021/06/17-08:30)
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