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日航、好業績に「緩み」も 薄れる破綻の過去―再建・稲盛改革の10年

2020年01月18日15時11分

日本航空のエアバスA350=1日、東京・羽田空港

日本航空のエアバスA350=1日、東京・羽田空港

 日本航空の経営破綻から10年がたった。当時は「再建できず2次破綻する」との見方も強かったが、会長に就いた京セラ創業者・稲盛和夫氏の下、日航は再生を果たし、いまや高収益を稼ぎ出す優良企業だ。破綻の過去は薄れつつある一方、国が救済した経緯には批判も根強い。日航は成長し続けることで存在価値を示す考えだが、好業績の中、緩みも指摘されている。
 ▽意識変えた「哲学」
 日航再建の功労者は間違いなく稲盛氏だ。当時は、稲盛氏に「八百屋もできない」とこき下ろされた経営陣だけでなく、現場も当事者意識が薄いという問題を抱えていた。倒産への不安を持ちつつも「自分たちは一生懸命やっているとの思いから会社への不満があった」と、客室教育訓練部の高原由美子部長は振り返る。日本を代表する航空会社との意識から、経営危機にひんしても「国が助けてくれる」と甘えを持つ社員もいた。
 日航は問題企業だったが、国民に身近な存在でもある。国民からの人気が頼りの民主党政権(当時)にとって、公的資金を投入する以上、再建は失敗が許されない事案だった。前原誠司国土交通相が三顧の礼で再建を託したのが稲盛氏だった。
 稲盛氏は部門別採算を重視する京セラ流アメーバ経営と「フィロソフィ」と呼ばれる独自の哲学を日航に持ち込んだ。部署ごとに改善を積み重ねるアメーバ経営でコスト削減を進めるとともに、フィロソフィでは人生哲学と経営哲学を説いた。

日本航空が部門横断で実施するフィロソフィ教育研修。この日のテーマは「相手のために何ができるかを考える」=14日、東京都大田区

日本航空が部門横断で実施するフィロソフィ教育研修。この日のテーマは「相手のために何ができるかを考える」=14日、東京都大田区

 「人間として何が正しいかで判断する」「果敢に挑戦する」。同社が策定した「JALフィロソフィ」には、当たり前に思える40項目の言葉が並ぶ。だが、実行は容易ではない。稲盛氏は役員を叱咤(しった)し続けた。
 次第に社員の意識が変わり、顧客目線のサービスが充実した。部門間の風通しも良くなった。部門別採算とフィロソフィは、日航が生まれ変わるための車の両輪となった。
 ▽慢心への懸念
 2013年3月、稲盛氏は取締役を退いたが、アメーバ経営とフィロソフィは残った。公的支援などで財務改善や燃費の良い新型機の導入が進んだこともあり、12年の再上場以降、毎年1600億円以上の営業利益を稼いでいる。日航はこのまま飛び続けられるのか。
 破綻から10年がたち、当時を知らない社員が半数を占めるようになった。業績の安定で、社員の意識が緩んだとの見方も出ている。意識改革推進部の長谷川正人部長は、近年相次ぐ操縦士の飲酒問題は「フィロソフィの浸透が緩んだ表れではないか」と懸念する。
 前原氏もこう指摘する。「破綻時の悔しさを忘れ、慢心してしまわないか。稲盛さんもそれを一番心配している」

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