クレーマーはこうしてつくられる【コメントライナー】
2020年01月04日09時00分
◆言の葉OFFICEかのん代表・川邊 暁美◆
言葉とコミュニケーションのプロとして、接遇マナー研修を依頼されることも多いが、最近、どの業界であっても、想像力の欠如なのか、相手の立場を思いやれない、ちょっとした「言葉足らず、気配り不足」で、問題をこじらせ、普通のお客をクレーマーにしてしまっているケースが目につく。
◇何かが足りない
例えば、ある病院で研修の際、「採血のとき、上手な人と代わってほしいと、わがままを言う患者が多く、手を焼いている」と相談された。
患者が痛い思いをしたくないと思うのは、当然のこと。「どの担当者も同じ水準で採血できるように、体制を整えるべきでは」と指摘すると、「新人もいるし、勝手なことを言われたら、現場が回らない」。
そこで、新人さんにロールプレイングをしてもらった。
患者役の「ベテランの人に代わってよ」に、固まる新人。何か言葉掛けをするよう促すと、「下手ですけど、頑張ります」。いや、それでは、かえって不安をあおる。
例えば、「申し訳ございません。きょうは連休明けで混んでいて、もうこれ以上お待たせしたくないので、私がさせていただきます」「痛かったらすぐにやめますので、ご安心ください」「もう少し深く腰掛けて、深呼吸を1回していただけますか」「アルコールは染みませんか・・・」など。
細やかな言葉掛けで、少なくとも不安感を和らげることはできるはずだ。
◇決めつける前に
さらに「救急外来の応対が悪い」とか、「案内が冷たい」とかの「過度な要望」もあるという。
「過度な要望だ」「理不尽な要求だ」と決めつける前に、病気やケガで不安な中、勝手の分からない病院に来ている患者や家族の心情を想像してみてほしい。
そんなときに、事務的な対応をされたり、何の説明もなく、長時間待たされたりしたら、日常の何倍も深く心に刺さるものだ。
研修前は「無茶な要求をする患者や家族が多い」という話だったが、ほとんどのケースは、相手を思いやり、その心遣いを言葉や態度で表すという、マナーの基本ができていないことから生じる問題であった。
ところ変わって、ある携帯ショップ。閉店間際、男性客が駆け込んできた。
「急に通話ができなくなった!明日の仕事の打ち合わせができないで弱っている!」
「あ~そうなんすね~、あ~これはダメになっちゃってますね~ははは」
おっとり対応していた男性店員が怒鳴られるまで、3分もかからなかった。
真剣に親身になって対応してもらえなかった失望と焦りが、怒りに変わったのだと想像できる。笑顔で応対した自分がなぜ怒鳴られたのか、店員は気づくだろうか。
(時事通信社「コメントライナー」より)
【筆者紹介】
川邊 暁美(かわべ・あけみ) NHK神戸放送局ニュースキャスターを経て、1989年から7年間、全国初の県政スポークスパーソン「兵庫県広報専門員」。2008年、声と言葉のコミュニケーション力、表現力アップのコンサルティング「言の葉OFFICEかのん」を設立。講演、セミナー、企業研修に活躍。著書に「『声』と『言葉』で心に響くプロの話し方作法」。神戸女学院大学非常勤講師。
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