【地球コラム】共産党と読者が「ご主人様」
2019年09月22日17時00分
◇環球時報・胡錫進編集長インタビュー
中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」の胡錫進編集長(59)は、北京市内で時事通信のインタビューに応じた。他の中国メディアでは見られない独自の分析が同紙の特色。論説やツイッターなどによる胡氏の発信は、党・政府の本音を反映しているとみられ、各国の中国専門家が注目している。
今回のインタビューで、胡氏は自らの人事権を握る共産党と読者という「2人の主人」の下で活動していると説明。体制の枠内で独自性を追求してきたことへの思いを率直に語った。反政府抗議活動が続く香港情勢については「香港の国際金融センターの地位を失うことはできない」と述べ、混乱回避を優先し、武力鎮圧に否定的な見解を強調。米国との対立が深まる中、日本を重視する態度を明確にする一方、米国の軍事的圧力に対抗することが目的だとして中国軍の増強を正当化した。(時事通信社中国総局特派員 北條稔)
◇中国社会の最大公約数で報道
胡錫進編集長との一問一答は次の通り。
-環球時報は中国メディアとしてはユニークな存在だが、どのように自らを位置付けているか。
中国は日本とは異なり、一個人が新聞を作りたいと思っても、その意思が反映される訳ではない。2点指摘したい。1点目は、われわれは人民日報傘下の新聞だ。人民日報は私を任命し、いつでも更迭できる。人民日報の上部には中国共産党中央宣伝部がある。つまり、宣伝部はいつでも私をクビにできる。
2点目は、われわれと人民日報など他の新聞は異なる。われわれは創刊以来、市場で生きている。読者に受け入れられないと生存できない。すべてのコストは自分で払い、給料は自分で稼がないといけない。私にとって読者は宣伝部と同様に重要だ。私には(宣伝部と読者という)2人の主人がいる。読者が私の新聞を買わず、ウェブサイトを見なければ私は生きていけない。私は2人の主人に責任を負い、2人の主人を喜ばせないといけない。
私はいつも党・政府と人民大衆を意思疎通させ、対立させないようにしてきた。この点で非常に成功してきた。あるメディアはいつも党・政府と人民大衆の対立をもたらし失敗した。私は重要問題のたびに中国社会の最大公約数の上に立ち報道してきた。
-習近平国家主席と個人的な関係は。
ありません。
-他国の報道で不愉快に思うことは。
中国に対する報道は真実ではない。分析も実際の状況とかけ離れている。中国を悪者にしようとするものもある。もちろんこんな報道を見ると不愉快だが、一方で理解もできる。彼らの体制の下で、米英仏独の西側メディアは、一人の編集長が全メディアを仕切っているように見える。彼らの価値観、立場が先行している。かつてわれわれは西側メディアを尊敬していた。自由で客観的だと思っていたが、そうではないと分かった。報道に先立つ見解があり、その見解を中国の状況に当てはめている。
◇軍出動は「最後の手段」
-最近、香港を取材したそうだが、現状をどう見るか。
私はまだ香港情勢をコントロールできると信じている。香港政府と香港警察は自らの職責に忠実だ。困難はあるけれども、義務をしっかり果たし、基本法に忠実だ。香港警察は権威を保っている。最初の頃、デモ参加者は多かったが、人数が減ってきている。しかし、一部の過激な人々の暴力が激しくなっている。
香港に必要なのは平和と安定だ。香港の繁栄を壊すことはできない。国際金融センターの地位を失うことはできない。このことは大多数の人が望んでいる。最大公約数は、香港が混乱の地になってはいけないということだ。この点は大多数の人が支持している。
-逃亡犯条例改正案を撤回しても混乱は続いている。10月1日に中国建国70周年を迎えるが、解決策は。
第一に考慮すべきことは、香港にとって良いかどうかだ。当然、中央政府は10月1日の前に収拾することを望んでいる。平穏に10月1日を過ごすことを望んでいる。しかし、香港情勢にプラスになるという目標よりも優先する目標ではないと私は思う。
-軍や人民武装警察部隊(武警)の投入は香港の利益にならないと思うが。
武警は少し前に(香港に接する大陸側の)深センに集結した。この動きは香港の過激派に対する一種の威嚇だ。もし香港政府が情勢をコントロールできるなら、香港政府の力で香港の秩序を回復することが最良であり、当然優先される選択だ。軍や武警の出動は最後の手段になる。香港情勢が完全にコントロールできなくなり、香港政府が無力になっていると私は考えていない。香港警察は大したものだ。権威があり、活動を強化している。デモ参加者の数は減り、暴力の中止と秩序の回復を支持する人がますます増えている。
-環球時報記者がデモ隊に暴行された事件で、記者の身元を疑う報道がある。
彼はわれわれの記者だ。完全なデマだ。彼は普通の記者だ。(環球時報に)入ってまだ時間がたっておらず、記者証がない。記者証の取得手続きがまだ終わっていないが、特別なことではない。
◇西側政党は有権者の「ご機嫌取り」
-建国70周年を迎えるに当たって感想は。
中国共産党の目標ははっきりしている。西側にこのような政党はない。(西側の政党は)絶えず選挙が行われ、競争が求められる。だから、有権者のご機嫌を取るために虚偽の目標が作られ、短期の利益で有権者をだます。中国政治にこのようなゲームはない。共産党は絶えず大衆の生活を改善し、人民に満足感を与えている。
-中国の急速な軍事力増強に日本や周辺国は脅威を感じている。
中国の軍事拡張は確かに早い。しかし、国内総生産(GDP)比では、中国の軍事費は米国よりも小さい。中国は安全だと感じていない。米国は貿易戦争を発動し、台湾問題や南シナ海問題で中国に圧力を加えている。もしも中国が軍事的に強大な国でないなら、米国はおそらくすでに中国に軍事的な措置を取っているだろう。国防能力はその経済力にふさわしい水準であるべきだ。経済が強大で繁栄しても、軍事が弱ければ、他人に富を奪われる。
中国の軍事力は、米国が中国を尊重しようと考えるレベルにまだ達していない。もし中国の軍事力がさらに強ければ、米国はもっと中国を尊重する。米国がわれわれを非難しても、何の行動も取らないだろう。しかし、現実は米国の軍艦が台湾海峡を通過し、南シナ海を周回している。明らかに挑発している。
中国の軍事的台頭に懸念を抱く日本人がいることは理解する。しかし、私が日本人に言いたいのは、中国の軍事力の発展は日本に向けたものではないということだ。中国の軍事戦略は防御的で、われわれが誰かに挑戦することはない。
◇日本との関係改善が戦略的焦点
-習近平国家主席が来春訪日するが、今後の日中関係をどう見るか。
中日関係について私は非常に楽観的だ。中日両国は少し前ぎくしゃくした関係だった。次第に軟化し、全体の戦略的な大きな環境(の変化)によって、中日関係は絶えず改善するだろう。今は日本にとって戦略的に良い時期だ。中国と米国が戦略上、ますます緊張している。日本がこの動きを利用して国益を最大化すると信じている。
日本は過去、米国と一貫して緊密で、中国と対立していた。米国は日本を軍事的に保護すると同時にばかにしていた。貿易など各分野で日本に上から目線の態度だった。(米中が対立する中で)日本が中国との関係を改善すれば、米国の態度を変えるてこになり得る。中国と米国のどちらとも良い関係を保つことは日本の国益にかなう。
現在、中国の戦略的焦点が移り、中国社会全体で日本との関係改善に前向きな態度が目立っている。これは戦略的要因だと言うべきだ。過去、中国、日本、米国の3カ国の関係で、中米両国(の存在)が大きく、日本は独立した役割を果たしていなかった。現在、中日米3カ国の関係は三角形のようになっていると感じている。日本人が自らの国家的利益に沿って、中日関係を進めると信じている。
◇ ◇ ◇
胡錫進氏 中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報編集長。北京外語大修士。1989年11月、人民日報に入社。05年9月、環球時報編集長。59歳。
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